イラン謎の毒ガス攻撃の背後には? 政府の「復讐」を疑う声も
昨年9月16日のマーサ・アミニの死以来、政府に対する抗議運動が絶えないイランにおいて、3ヶ月ほど前から謎の異臭ガス事件が全国の女子校や女子寮で頻発している。このガスは頭痛、呼吸困難、昏睡、吐き気、血圧の低下などの症状を起こすもので、すでに31ある州のうち25州の230ほどの教育機関が事例を報告。被害を受けた学生は5000人以上で、そのうち数百人が入院を余儀なくされた。
◆小学校から大学まで女子校で頻発
最初に異臭ガス事件が起こったのは、反政府運動が非常に高まっていた昨年11月30日。突然18人の生徒が倒れ、コム市の病院に搬送された。この謎のガス攻撃は、その後も全国の女子校で発生。被害に遭った一人は、「悪臭がいきなり広がり、気分が悪くなって床に倒れた」(ル・モンド紙、3/7)と話している。その一方、入院した女生徒の一人は「何の匂いにも気がつかなかった。(中略)急に息ができなくなって、吐きたくなり、その後気を失った」(ル・ポワン誌記者ツイート、3/5)と証言している。
今のところ重症例は報告されていないが、その発生頻度は時を追うごとに加速し、3月4、5日の週末には16州もの女子校で発生する事態となった(ル・ポワン誌記者ツイート、3/6)。
◆4ヶ月目にして重い腰を上げる政府
不安を抱く保護者らが声高に訴え続けたことから、3月3日にはエブラヒム・ライシ大統領が、内務相と情報相に調査を要請。これを受けて保健省の科学委員会は最初の報告書を発表し、ようやくガス攻撃の存在を政府が初めて公式に認める形となった。
続いて6日には、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が、この攻撃は「許されない犯罪」だと発言。翌7日には、マジッド・ミラマディ内務副大臣が国営テレビで5つの州で、容疑者数人が逮捕されたと発表した。重い腰を上げた途端に電光石火ともいえる早業だが、容疑者や事件についての説明は何もなく、用いられたガスが何であったのかもいまだ明らかではない。
それにもかかわらず、ミラマディ内務副大臣はこれに先立つ5日に、毒ガス事件首謀者は「暴動の炎を再燃させようとしている」と発言し、マーサ・アミニの死をきっかけにした政府への抗議運動者たちを暗に非難した(ル・モンド紙)。
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