ブラジルのヤノマミ族問題 深刻な健康被害、数百人が都市で路上生活強いられる
公設市場沿いの歩道に小さなグループが広がっている。遠くから見ると、ボア・ビスタ市内の路上で生活する数百人のホームレスの人々だと錯覚するかもしれない。
しかし、それはヤノマミ族の集団である。アマゾン熱帯雨林を拠点とする先住民族であり、比較的孤立した環境で伝統的な生活を営む。極右のジャイル・ボルソナロ前大統領による政権下で長く放置されてきたことから健康危機が発生し、違法な金採掘業者が居住地に流入したことで状況がさらに悪化した。その結果、多数のヤノマミ族が、この地域最大の都市にあてもなくとどまることを余儀なくされている。
ボア・ビスタのフードマーケットに住むグループの最年長は、オマ・ヤノマミ氏(46)とボニタ・ヤノマミ氏(35)の夫妻である。空路でのみアクセス可能なコロアシピイテリ地区の出身だ。2022年9月、マラリアにかかった3歳の息子とともに、ボア・ビスタへ救急搬送された。
当初、夫妻と子供はカサイと呼ばれる先住民族のための保健施設に滞在していた。連邦政府によって建てられたこの施設は、44万人の人口を抱える広大な都市でロライマ州の州都、ボア・ビスタの郊外にある。数日もたたないうちに家族は施設を離れ、路上での生活を始めた。
2月9日、オマ・ヤノマミ氏は汚れた歩道に座り、片言のポルトガル語で「とても混み合っていた」と、AP通信に施設内部の様子を伝えた。車の往来が激しいなか、隣では同氏の妻が眠っている。2人とも打撲傷を負っており、健康状態もよくないように見えた。
治療を受けているヤノマミ族とその親族が滞在するカサイについて、保健省は先日、悲観的な見通しを示す報告書を発表した。200人の収容人数が想定されているこの施設に700人が滞在しており、その人数はヤノマミ族の人口の2%に相当する。この人数には、深刻な栄養失調を抱える数人の子供など、入院中の患者は含まれていない。
「バスルームは不衛生であり、食事スペースは狭く不快な環境である。さらに、2、3ヶ月前までは食事の量も十分ではなかった。ヤノマミ族は、食事の準備などを行うためのスペースが確保できず、夜には数人の酔っぱらいや、暴力や車によるひき逃げがあった」と報告されている。
報告書によると、150人は元の村に戻ることができる状況にあるものの、帰りのフライトの空席待ちに非常に長い時間を要しているという。待ち時間が10年に及ぶという極端な例もあった。
ブラジル国内最大の先住民族居住地では、推定3万人のヤノマミ族が暮らしている。
ポルトガルの面積にほぼ匹敵する広さで、ブラジルのアマゾン熱帯林の北西端に位置するロライマ州とアマゾナス州にまたがる地域にある。
オマとボニタ・ヤノマミ夫妻にとって、路上での生活は苦難を伴うものであった。ほどなくして息子は肺炎にかかり、一方で夫妻は酒に溺れるようになった。ヘルスワーカーがこの事態を突き止め、子供を地域の病院へ連れていった。そこで「困窮状態にある」と認定された息子に対し、両親からの同意を得ることなく養子縁組に向けた手続きが開始された。
4ヶ月の間、夫妻は息子と会うことはなかった。その後、先住民族の運動にかかわるソーシャルワーカーが介入したことで面会が叶った。子供の将来は今、司法による判断に委ねられている。
ボア・ビスタの路上でヤノマミ族に会うことは珍しいことではないが、その多くが飲酒の問題を抱えている。夜になるとカサイへ戻る人もいれば、高架下で夜を明かす人もいる。
ヤノマミ族の生活は過酷である。1月下旬には、ヤノマミ族の女性が路上で出産した。2月9日には、ヤノマミ族の男性が刑務所内のけんかで負傷し、その数日後に死亡したと法務大臣が伝えた。ロライマ州では、269人の多様な先住民族が刑務所に収容されている。
ルラ大統領率いる連邦政府は1月、ヤノマミ族に公衆衛生上の非常事態宣言を出した。それにより、ボア・ビスタの野戦病院では1000人以上が軍医による治療を受け、広大な居住地域には食料の入ったバスケット4000個が配布された。
これと並行して、治安部隊が金採掘業者の設備を破壊し、2万人と推定される違法な採掘人の地区への立ち入りを規制し始めた。それにより数十人が先住民族居住地からの退去を決めたものの、残りの多くは金の採掘を続けている。
先住民族に関わる団体は、現在4歳になったヤノマミ夫妻の子供が両親の元へ戻ることを望んでいる。6人の兄弟が待つコロアシピイテリへ、飛行機に乗って帰ることができればと願っている。
By FABIANO MAISONNAVE and EDMAR BARROS Associated Press
Translated by Mana Ishizuki