遺体を土にする「堆肥葬」、米ニューヨーク州も認可 環境に優しく注目
◆宗教や倫理観からの抵抗も
だが、ニューヨーク州のカトリック司教は、人体を家庭ごみのように扱うべきではないと反対の意を示している。
堆肥葬も生分解性棺の使用も禁止されているフランスだが、本件を伝える現地記事の読者コメントを読むと、「それで子供たちにこのトマトはパパのおかげでできたんだよ、って言うのか」というシニカルなものや「古き良き時代の葬儀はどこへ行ったんだ」と嘆く声、「最悪だ! 考えられない! 世界は狂っている」という激しい言葉が目につく。
◆アメリカ以外の国では?
ヨーロッパでもスウェーデンはすでに堆肥葬を合法化している。ベルギーでも堆肥葬の合法化を目指す運動が8年以上前から始まっており、一部で準備が進んでいるが、今のところまだ認可されていない。
また、堆肥葬とは少し異なるが、イギリスでは棺なしでの埋葬や、生分解性の棺の使用が可能となっている。生分解性の棺はオランダでも使用可能であるが、フランスなどでは禁止されている。ちなみに通常の棺に納められた遺体が分解されるのには10年以上の年月が必要だ。
◆エコロジーが宗教を凌駕する時代に
とはいえ、アメリカでは徐々に堆肥葬を選ぶ人が増えている。シアトル近郊にあるケントの町では、上述のリターン・ホーム社が所有する土地に、堆肥葬でできた堆肥を利用した丘が作られている。リターン・ホーム社は、2022年春までの7ヶ月で40件の堆肥葬を実行した。(RTBF)
亡くなった息子の希望を尊重して堆肥葬を実行した母親シンディさんは、息子の言葉を聞いた時は屈辱を感じたと回想する。しかしすべてが終わった後、「息子は自然に帰りたかった」のだと理解し、自身も堆肥葬支持者になったと語る。(同)
米国葬儀社連盟NFDAは、2035年には伝統的な埋葬を選択するアメリカ人はわずか15%になると予測している(フランス・アンフォ)。
とうとう、エコロジーが宗教や伝統さえも凌駕する時代が来たということだろうか?
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