「教師に銃を持たせて子供を守ろう」米の一部州で動き加速 相次ぐ銃撃事件受け

事件のあったロブ小学校で祈りをささげる男性(6月9日)|Eric Gay / AP Photo

 アメリカ南部テキサス州ユバルディの小学校で5月24日に起きた銃乱射事件は、全米に衝撃を与えた。学校の教室に侵入した18歳の男が半自動小銃「AR15」で100発以上を乱射し、児童19人と教師2人の計21人が犠牲になった。「学校の教職員に銃を携行させて、子供を守るべきではないか?」と、議員の間で高まる銃規制法改正を求める声をめぐり、いま大きな議論が巻き起こっている。

◆オハイオ州、ルイジアナ州 教師の銃携行を推進
 オハイオ州のマイク・デワイン州知事(共和党)は6月13日、市民や専門家らが参加する小委員会での圧倒的な反対の声を押し切って、以前から支持していた教師による学校への銃の持ち込みを認める法案に署名した(ニュース・チャンネル5・クリーブランド 6月13日)。教師による銃の持ち込みを最終的に決定する権限は、学区委員会にあるが、同法によって、教師は上着のポケットや銃のウエストケースに入れて、学校に持ち込むことが早ければ9月には可能になる。訓練時間は、警察官の60時間と比較しても、24時間と最短だ。現行法では銃携行にあたって700時間以上の訓練が義務付けられていたが、教職員による銃の携行を促すため、それが短縮された。同法案を提議した共和党州議員ジェリー・シリノは「(前略)教室で不審者が襲撃した場合に備えて、教室に銃器がある状態にするのが同法の狙いだ」と語る(同)。

オハイオ州に続いて、ルイジアナ州でも、学校の教職員が銃を他人から見えない形で隠し持つことを認める法案が下院議会を通過した。しかし、13日に閉会する上院議会での審議には間に合わず、同法案の是非を問う投票は先送りとなった(デイリー・アドバタイザー 6月9日)。

全米州議会議員連盟(NCSL)によると、全米で学校の敷地内で警護員以外の学校関係者が銃器を携行するのを認める州は、オハイオ州を入れて、少なくとも10州に増えた(74 6月13日)。教師の銃器携行を法制化していなくても、銃による警備を強化する学校は増えている。ケンタッキー州は先週、州内の学校に警察で派遣される専門の警護員「スクールリソースオフィサー(SRO)」の常駐を義務付けた。また、バージニア州は予算を増額し、学校内に警察官を配置する計画を実施する(USAトゥデイ 6月14日)。

Text by 中沢弘子