封鎖解除とは名ばかり…「ゼロコロナ」に翻弄される上海の人々 国外脱出も

ロックダウンが解除されショッピング街を歩く上海の人々(6月1日)|Ng Han Guan / AP Photo

◆接触アプリに監視される日々
 6月1日にロックダウンを解除したとはいえ、その厳格さには変化がない。感染者や接触者が一人でも見つかれば、住居のある建物は封鎖され、当事者と家族、時には隣人までもが隔離施設に送られるのだ。

 中国居住者は、接触アプリにより移動先をすべて記録されている。PCR検査の結果もアプリに取り込まれ、ほぼどこに行くにもQRコードが必要だ。ロックダウンが明けても、上海ではレストランやオフィスに足を踏み入れるには、72時間以内の陰性証明書が必要だ。そのため、いまはどこのPCR検査所にも長蛇の列ができている。検査結果も遅れがちなため、72時間以内の陰性証明書を携帯するには、ほぼ2日おきにPCR検査を受ける必要があるという。(フランス24、6/8)

 帰国を控えたあるフランス人一家は、万が一どこかで感染者とすれ違い、接触アプリに「接触者」認定されることを怖れ、帰国前の数日間は一家で家にこもる予定だとインタビューに答えている(同)。

◆接触者の接触者も隔離施設へ連行
 だが、そこまでしても100%安心できるわけではない。たとえば、筆者の知人の家では、先週高校生の娘が接触者の接触者と認定された。朝4時にそれを知らせに来たのは保健所関係者と警察官で、そのまま彼女を隔離施設へと連行していった。

 また、6月1日以降に営業を再開したある美容院には、2ヶ月間髪を切れなかった客が多く訪れたが、そのうちの一人が感染者だったことが判明し、同美容院に足を運んだ数百人が一気に接触者としてマークされた。そのうち一人は、筆者の知人の住むマンションの別棟の住人で、その棟は即日閉鎖され、接触者とその家族は夜のうちに隔離施設へと連れて行かれた。これにより知人の住む別棟の住人も全員PCR検査を受けることになった。ちょうどその2日後に上海を発ち帰国の途に就く予定だった知人は、帰国できなくなるのかと目の前が真っ暗になったと語る。

Text by 冠ゆき