拳銃所有者の同居人は殺されるリスクが高い=米研究
各種の調査によると、アメリカで銃を所有する人のほとんどが「自分自身と愛する人たちの身を守るために銃を所有している」と口にしている。しかし、4月4日に発表された新研究では、拳銃の所有者と同居している人は家庭内に拳銃のない人よりも射殺されるリスクが高いことが示された。
スタンフォード大学の研究者であり、このたび医学誌アナルズ・オブ・インターナル・メディシン(Annals of Internal Medicine)に掲載された研究の筆頭著者のデビッド・スタッダート氏は「拳銃のある家で暮らすことによる防護効果は、何ひとつ認められませんでした」と話す。
ただしこの研究はいくつもの点で不完全なものだ。たとえば研究者は、被害者が拳銃の所有者によって殺されたのか、あるいは家の中にあった武器で殺されたのか特定できていないと自ら認めている。またこの研究では、違法な銃は考慮に入れておらず、しかも、ライフルやそのほかの銃器ではなく拳銃のみに着目している。
研究に使われた統計データは、カリフォルニア州内の21歳以上の登録有権者のみに限定したものだ。したがって、この調査結果をもって同州全体の状況が語れるかは不明であり、ましてアメリカ全土のそのほかの地域に一般化できるかは未知数だ。この点は著者本人らも認めている。
しかし、外部の専門家の一部からは、この研究は重要かつ優れた内容であり、この種の研究としてはこれまでで最大規模だとの声が聞かれる。
ジョンズ・ホプキンス大学で銃犯罪政策を研究するカサンドラ・クリファシ氏は「まさに画期的な研究だと言えます。私たちはこの研究を通して、家庭内の銃と殺人との、隠れた因果関係を知ることができます」と評価する。
銃所有のデータやそのほかの関連情報を提供しているという点で、カリフォルニア州はそれ以外の州とは大きく異なっている。カリフォルニア以外のほとんどの州では、そういった情報を入手すること自体が不可能だ。今回の研究グループは、この情報を使って数百万人にものぼる人々を何年にもわたってトラッキングし、家庭内に拳銃を置いて暮らすと何が起こるかについてより正確に解明しようと試みた。
本研究では、もともと拳銃を所有していなかったが2004年10月から2016年12月にかけての期間に拳銃を新たに所有するようになった家庭(つまり、拳銃所有者と同居を開始した、または家族の誰かが購入したことにより拳銃を保持するにいたった家庭)で暮らすカリフォルニア州の住民約60万人を調査対象とした。
その結果、それらの家庭では5年間で10万人あたり12人が他者の手で射殺されると算定された。その一方、銃を所有していない家では、同期間中の銃による他殺死者数は10万人あたり8人と見積もられた。
スタッダート氏は「もちろん確率としては低く、絶対的なリスクは小さいと言えます。しかしながら、射殺死するリスクの増加そのものは深刻に受け止めるべきです」と話す。
数値を見ると、そこで示唆される射殺死リスクの増加幅は50%。しかし現実のリスクはそれよりも高いと同氏は警告する。居住エリアやそのほかの要因をより厳密に適用して計算した別の試算では、射殺死のリスクは事実上、2倍以上高くなるとの推定だ。
これとは別に、本研究の著者らは、拳銃の所有者と同居している人が、配偶者や親密なパートナーに撃たれて致命傷を負う確率は、拳銃の所有者と同居していない人と比べてはるかに高いことを明らかにした。また被害者の大多数、率にして84%が女性だった。
今回の調査はカリフォルニア州のみに限ったものだ。ここよりも銃規制が緩く、家庭内での銃の保持がより一般化している州においては、このリスクはさらに高くなる可能性があるとクリファシ氏は話す。
これ以前に行われた調査では、アメリカ国内の成人のほぼ3%が、2019年1月から2021年4月までの期間に新たに銃を保持したと推定された。これは実数にすると、約750万人のアメリカ人口に相当する。そのうち約540万人はそれ以前には家庭内に銃を保持していなかった。
家庭内の銃によって暴力的な死のリスクが高まること自体は、過去数十年にわたり数多くの研究によって警告されてきた。ただし、スタッダート氏らの過去研究も含めて、そういった従来研究の多くが銃を使った自殺に着目したものだった。
一部の専門家は、スタッダート氏らの今回の新研究が「殺人のリスクから身を守れる安全性をもたらす点で、拳銃自体にはやはり価値がある」という認識に対しても疑問を突きつけている点で、従来研究よりも踏み込んだ内容だと評価する。
ハーバード大学傷害管理研究センター所長デビッド・ヘメンウェイ氏は「人々が家庭内に銃を保持する動機は、他者から身を守るためです。しかし、今回の研究は家庭内に銃を保持することにより、むしろその家の人々に悪影響が及ぶことを示しています」と述べている。
By MIKE STOBBE AP Medical Writer
Translated by Conyac