薬が効かないスーパーバクテリアの感染症、年120万人超が死亡
◆1年で127万人が死亡
そのようななか、ランセット誌に1月19日に発表された研究は、薬剤耐性問題が予想よりも速く進んでいることを明らかにした。同研究によれば、スーパーバクテリアによる死者数は、2019年には127万人を数えたが、これは、マラリアによる死者の2倍以上で、HIV感染による犠牲者数をも大きく上回る数値だ。しかも、直接原因ではないがスーパーバクテリアに関連する問題で亡くなったケースも加えると、死者数は495万人に達した。(トップ・サンテ誌、1/20)
◆現象加速に新型コロナの影響
同研究の共同著者の一人、ワシントン大学のクリス・マレイ教授は、「以前の推定では2050年までに抗菌薬耐性による死者が年間1000万人になると見積もられていたが、すでにその数字に思った以上に近づいていることは確かだ」と、ペースの速さを指摘している(ル・タン紙、1/21)。
この現象の加速には、新型コロナウイルスによるパンデミックも関与している。パンデミック以来、細菌感染が見られなくても、予防的に抗菌薬を処方するケースが増えているからだ。「臨床感染疾病」に発表された2020年5月時点の調べによれば、調査対象となった新型コロナ患者のうち、細菌感染を併発した人は8%に過ぎなかったが、抗菌薬を処方された人は72%もいた。(フュチューラ・サンテ、2020/10/17)