男性同性愛者の献血、仏で全面解禁へ 性交歴の条件を見直し

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 世界の多くの国はHIV感染予防を理由にゲイ・バイセクシャル男性に献血を禁じてきていたが、ここ数年解禁に向かう傾向がみられる。HIV感染リスクが大幅に減少したのが第一の理由だが、性的マイノリティへの差別を是正しようとする意識も感じられる。さらに、パンデミックが引き起こした血液不足もこの動きを後押ししている。

◆HIVリスクを理由に禁止されてきたゲイ男性の献血
 フランスは1月11日、男性同性愛者の献血が3月16日から条件なしで可能になると発表した。フランスではHIV感染のリスクがあるとして、1983年からゲイ男性の輸血を禁止していた。この禁止は2016年に解かれたが、過去1年の間に性交渉をもっていないという条件付きだった。この期間は2019年に4ヶ月に短縮されている。(20minutes紙、1/11)

 今回の決定は、この期間の条件自体をなくすものだ。同紙によれば、フランスに先立ち、スペイン、イタリア、イスラエル、イギリスもゲイ・バイ男性の献血を解禁する方向に動いているという。

◆献血前の禁欲期間、日本では?
 献血に禁欲期間を強いられると聞くと意外な気がするが、こういった条件を課す国は多い。ベルギー、アイルランド、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、オランダなどヨーロッパの多数の国がそうであり(フランス・アンテール、2019/6/20)、アメリカや日本も同様だ。ちなみに日本が設けるゲイ・バイ男性の献血に要する禁欲期間は6ヶ月だ。

 この条件をなくすことを決めたフランスは、その理由を「(ゲイ男性のHIV感染率が)格段に減少し、輸血のリスクもめっきり下がった」からと説明している。数値でいえば、1990年のフランスでは献血31万件につき1件がHIV陽性だったが、現在ではその40分の1に減ったとされる。(ル・モンド紙、1/11)

 ただ、禁欲期間を課す条件は、一見論理的に見えるが、場合によってはそうでもない。というのは、男性同性愛者は、たとえ同じ相手としか性交渉を持たない場合でも、献血前の1年間禁欲しなければならないのに対し、異性愛者はこの限りではないからだ。そのため、各国のLGBT組織は、これまでも何度かこの「差別」の是正を訴えてきた。

Text by 冠ゆき