豪の悪名高い収容施設、ジョコビッチ滞在で注目集める

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 セルビア人テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)は、全豪オープンの試合に参加するためにメルボルンに到着したが、空港にてビザが取り消され、入国を拒否された。結果、ジョコビッチは、難民申請者の収容施設として使用されているメルボルン市内のホテルに待機することとなり、彼の処遇や収容施設に関する論争を呼んだ。その詳細とは。

◆ビザ取消と入国拒否の経緯
 1月5日、男子シングルス世界ランキング1位のジョコビッチは、昨年制覇した全豪オープンの試合に参加するため、オーストラリア・メルボルン空港に到着。事前にビザを取得していたものの、空港でビザが取り消され、入国を拒否されるという事態に直面した。ジョコビッチは、空港での約10時間の膠着状態の末、国外退去を命じられたが、即刻退去はせずに法廷で争う選択を選んだ。結果、ジョコビッチは収容施設として使用されているメルボルン市内のホテルに待機することになった。入国拒否は、コロナウイルスのワクチン接種義務に対して、医療上の理由による免除を十分に証明できなかったことが理由とされている。ジョコビッチは、自身のワクチン接種状況は明らかにしていないものの、2回のワクチン接種義務のルールを批判する立場を表明していた。

 ジョコビッチのビザ取消の措置に対して、オーストラリアのスコット・モリソン首相は、ここぞとばかりにツイッターでの発信を行った。モリソン首相は「ジョコビッチ氏のビザは取り消された。とくに国境に関しては、ルールは絶対で、上に立つ者はいない」とのメッセージを発信した。オーストラリアでは、コロナウイルスの感染防止対策として厳しいロックダウン措置が敷かれており、国民感情に寄り添うような意図も伺える。一方、セルビア大統領、アレクサンダル・ブチッチ(Aleksandar Vučić)もインスタグラム投稿を行い、「ジョコビッチと電話で会話した。セルビア全国が彼の味方についていると伝えた」と述べた。

 10日、弁護団の控訴を受けての公聴会が開かれた。裁判官は、ビザ取消の無効化の決定を下し、ジョコビッチは、待機場所からの解放と入国が認められた。政府は、この決定を覆し、再度のビザ無効化、入国拒否の判断を下す選択肢もあるとの見解を示した。

Text by MAKI NAKATA