接種8割も感染急増 それでも「ウィズ・コロナ」を行くシンガポール

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 シンガポール政府は6月にゼロ・コロナ戦略からコロナとの共存に舵を切った。それに伴い8月に行動制限を一部緩和したところ、新型コロナのワクチン接種を完了した人がすでに8割を超えているにもかかわらず、感染者が急増し始めた。規制を一部再導入したものの、政府のウィズ・コロナ継続の方針は変わっていない。

◆まさかの感染拡大 国民の意見も分かれる
 ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、シンガポールの10月1日の新規感染者は過去最高の2909人を記録。8月下旬から感染者が大きく増えている。感染拡大を受けて3人以上の集まりの禁止、在宅勤務の原則化など、先月末から再び規制が強化されている。

 感染者の急増で、入国者に2週間のホテル隔離を義務づけたルールの再導入などを求める嘆願活動などが行われ、すでに9月30日には3000人ほどの署名が集まったという。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、準独裁国家とも呼ばれるシンガポールでは抗議活動がほぼ禁止されており、政府の戦略にこれほど反対が集まるのも珍しいとしている。

 同紙が取り上げた地元の市場調査会社のアンケートでは、回答者の半数以上が最新の規制は「ちょうどよい」としているが、4分の1は緩すぎるとし、残りの4分の1は厳しすぎると答え、意見が分かれている。

 複数の省庁からなるタスクフォースの共同議長、ローレンス・ウォン氏は、2日に行われた会見で、1日に数千人もの感染者が発生すれば、心配からロックダウンに戻ろうと考えるグループと、コロナとの共存を決めたのだからこのまま前進すべきというグループに分かれると説明。規制強化を求めるグループには感染者数に一喜一憂しないよう、さらなる規制緩和を求めるグループには辛抱強く待つよう求めた。そして同氏は、政府の方針は今後訪れる新たな波に備え、少々時間はかかるが、現在の体制を見直して今後の準備をしていくことだと説明した。(チャンネル・ニュース・アジア、以下CNA)

Text by 山川 真智子