ワクチン接種拡大図る米国 インフルエンサー起用や企業による義務化も

Evan Vucci / AP Photo

 米国は世界的に見ればコロナワクチン接種が進んでいる国の一つだが、デルタ株の流行もあり、さらなるワクチン接種の促進が必要とされている状況だ。ボトルネックとなっているのは供給量ではなく、ワクチンを躊躇したり、反対したりする人々。こうした状況に対し、バイデン政権はSNSやインフルエンサーなども動員し、接種率拡大キャンペーンを進めている。

◆コロナワクチンへの容易なアクセス
 米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は、12歳以上のすべての人々がコロナの予防接種を受けることを推奨している。CDCが公表している現時点のデータによると、米国全人口の半分がコロナウイルスの予防接種を完了している(fully vaccinated)。18歳以上の成人においては、その6割が予防接種を完了。7割が少なくともワクチン接種の一回目を完了している。バイデン政権は今年5月、7月4日の米国独立記念日までに米国の18歳以上の成人のワクチン接種率70%を達成するという目標を掲げていた。7月4日時点では、この目標は達成されなかったが、約一ヶ月後の現在では実際の接種率が目標値に追いついた。

 一方でコロナの新規陽性者数も急増している。米国における新規陽性者数増加のトレンドは、パンデミック開始後から小さな波を打ちながら上昇し、今年の1月にピークを迎え、ピーク時、過去7日間の移動平均は約25万件であった。その後、感染者数は順調に減少してきていたが、6月下旬ごろから新規陽性者数が急増し始めた。現時点での過去7日間の移動平均は約11万件を記録している。新規陽性者の多くはワクチン接種が完了していない人々だ。8月上旬の発表によると、現在、米国のコロナウイルスはデルタ株が主流となっている。CDCのウェブサイト上は、ワクチン完全接種済みであっても、コロナウイルスに感染するケースがあるとしつつも、米国で承認されているワクチン(モデルナ製、ファイザー/ビオンテック製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製)は、デルタ株に対しても非常に効果的であると明記されている。

 たとえばケニアをはじめとする多くのサブサハラ・アフリカ諸国などのように、ワクチン供給の絶対数自体が不足している国と違って、米国ではワクチン接種のハードルは低い。専用のウェブサイトを利用して、近所でワクチンを接種できる場所を検索し、オンラインなどで予約が可能。たとえばニューヨークのマンハッタンなどでは、徒歩で歩き回れる距離であるミッドタウン地区周辺だけでも50の場所が見つかる。その多くは医療機関ではなく、CVSやウォルグリーンといった大手薬局チェーン。3社のワクチンから希望するものを選択し、予約することが可能だ。

Text by MAKI NAKATA