世界に広がるデルタ株の脅威

バングラデシュ・ラジシャヒの病院(6月16日)|Kabir Tuhin / AP Photo

◆デルタ株感染拡大
 現在、欧州でデルタ株の拡大が著しい国には、イギリス、ロシア、ポルトガルが挙げられる。そのうち、イギリスでは6月14日の段階で、新規感染例の96%をデルタ株が占めている(ル・モンド紙、6/27)。

 5月半ばから6月頭にかけて早い時期にイギリスからの観光客を受けて入れていたポルトガルでも、デルタ株増加が著しく、6月20日の時点ですでに新規感染者の60%を占めるに至っている(RTL 5minutes、6/23)。そのため、6月24日には制限の緩和を一旦停止し、リスボンに限っては、逆に制限強化を決めた(ニース・マタン紙、6/25)。またイギリスからの入国者でワクチンの接種が完了してない人には14日間の隔離を義務付けた(ストレーツ・タイムズ、6/29)。

 一方ロシアでは、デルタ株によるとみられる感染拡大で、6月27日には首都モスクワでこれまでの最大の死者数144人を記録している。そのためリモートワーク義務やサービス業のワクチン接種義務を導入し、28日からは、レストラン利用にワクチンパスポートを必須とするなど制限策を増やしている。(ル・モンド紙)

 現在のところ、ベルギーでは新規感染者にデルタ株が占める割合は16%(ル・モンド紙)、フランスでは約20%(20 Minutes紙、6/29)だが、上昇傾向にあるのは確かで、ECDCは、EU内での新規感染例中、8月頭には70%、8月末には90%がデルタ株になると見積もっている。

◆デルタ株が閉じる国境
 そのため、デルタ株感染拡大を理由に、流行国からの入国制限を新たに定める国も増えている。上述のポルトガルのほか、スペインも6月28日から英国からの入国者に陰性証明書かワクチン証明書を義務付けることを決めた(ストレーツ・タイムズ)。また、ドイツは、6月29日から、イギリスやインド、ブラジルに加え、ポルトガルとロシアからの入国もほぼ禁止とすることを決めた(ル・タン紙、6/26)。

 イギリスとアメリカは、7月4日までに両国間のトラベル・トラックのアウトラインについて合意する意向だったが、これもまたイギリスのデルタ変異株の急増などが理由で、長引く可能性が高まっている(ストレーツ・タイムズ)。

Text by 冠ゆき