世界に広がるデルタ株の脅威

バングラデシュ・ラジシャヒの病院(6月16日)|Kabir Tuhin / AP Photo

 デルタ株の脅威は、欧州のほか、アフリカ、アジア、オセアニアにも広がり、制限緩和を進める国がある一方、再度引き締めに踏み切る国も少なくなく、世界的に混乱している。

◆従来株の2倍以上の感染力
 インドで最初に確認されたデルタ株の正式名は「B.1.617.2」。これまでに少なくとも85の国で確認されており、世界保健機関(WHO)は5月10日、「懸念される変異株」に指定した。

 欧州疾病予防管理センター(ECDC)の6月23日の発表によれば、デルタ株はアルファ株よりも40~60%感染力が高いとみられる。アルファ株自体、従来株より感染力が50%高いとも言われ、デルタ株の感染力の高さは相当なものだ。

◆ワクチンと感染歴のデルタ株に対する効果は?
 イギリスのイングランド公衆衛生庁(PHE)が6月14日に発表したプレプリント研究によれば、ファイザーワクチンの2回接種は、デルタ株の症状に対して88%の効果があり、デルタ株感染による入院については96%の保護効果がある。アストラゼネカの2回接種も症状からは67%、入院からは92%保護してくれる。しかし、いずれのワクチンでも、一回目のワクチンしか受けてない場合は、その効果は33%と非常に低い。

 また、セル誌に6月16日に発表された報告は、新型コロナウイルス感染で得た抗体に、デルタ株への効果が低いものがある可能性があることを示唆するものだ。それによれば、アルファ株に感染してできた抗体は、すべての変異株に対して防御力を持つが、ベータ株やガンマ株に感染してできた抗体は、デルタ株に対して効果が低いと見られる。

Text by 冠ゆき