没後200年、いまもフランスを揺るがす「英雄」ナポレオン
◆国民の人気は衰えず
とはいえナポレオンは、フランス人が最も好む歴史上の人物アンケートでは、いまでも必ず上位にランクインする人気を維持する。2015年にフィガロ紙が行った調査では、2位のシャルル・ド・ゴール、3位のジャンヌ・ダルクを抑えて1位に輝き、2016年にウェスト・フランス紙が実施したアンケートでは、男性の部の2位を占めている。
実際、ナポレオンの影響はいまも色濃い。それもフランスだけでなく、ヨーロッパ、果ては世界にまで広がっている。近代法典の基礎となったナポレオン法典が、極東の日本の民法にまで影響を与えているという事実は、そのよい例だろう。ナポレオンは、そのほかにも、教育や行政制度を確立し、ローマ教皇との和解を実現するなど、多くの分野での基礎を固め、近代国家を創始した人物なのだ。
◆破壊的独裁者と見る人も
だが同時に、ナポレオンを破壊的独裁者と断じる声も根強く残る。たとえば、左派政党「不服従のフランス」に所属するコルビエール議員は、「皇帝の座に就いた人物にフランス共和国が公式に敬意を払うことはできない」としばらく前から明言していた(20 minutes、3/7)。それ以外にも、1802年に奴隷制を復活させたことや、軍事作戦により数十万の死者を出したことで批判を受けている。また、民法内で、夫婦間において夫に対する妻の立場を劣等に置くとしたことも、現代では非難の理由となっている(20 minutes、5/5)。
こういう背景から、フランスの元首は1969年以来半世紀以上、ナポレオンに対する立ち位置を明らかにしてこなかった。そのため、今回のマクロン大統領の記念式典開催決定に対し、多くの議論がもちあがったのは当然といえば当然の成り行きといえよう。