ウミガメ食べ19人死亡、マダガスカル 食中毒の原因とは
◆日本人が解いた毒の謎
これほどに強力な毒だが、何が原因であるかは長らく不明であった。この謎を解いたのは日本の東北大学農学部(当時)の安元健教授だ。答えを先に言うと、食中毒の原因は、亀の食べるアマモ(海草の一種)、さらにいえば、それに付着した細菌「シアノバクテリア(藍藻)にある。シアノバクテリアがシアノトキシンの一つであるリングビアトキシンAを分泌し、このリングビアトキシンAが「毒」として作用するのだ。
同教授が生命誌ジャーナル86号に寄せた回想によれば、1990年代ウミガメの集団中毒の知らせを受け、発生から2ヶ月後に現地に赴いた同教授ら一行は、地中深く埋められていたウミガメの食べ残しを掘り起こして持ち帰り、「実験室で悪臭に耐えながら抽出・精製を行い、毒物質リングビアトキシンAを検出」した。現地で子供たちに聞いた「最近海に入ると体がかぶれるんだ」という言葉が、この物質に見当をつけるヒントになったという。というのも、「リングビアトキシンAは皮膚に触れると炎症を起こし、経口摂取すると中毒を起こす」からだ。「ウミガメの大好物のアマモに付着したシアノバクテリアによって、この毒物質が作られていた」というわけである。
◆コロンブス以来の謎も
安元健東北大学名誉教授は、海産自然毒に数多く取り組み、コロンブス以来の謎であった「シガテラ」の謎や、フグ毒の謎も解いている。「シガテラ」とはサンゴ礁の発達した地域に見られる「魚に酔う」現象だ。同名誉教授らは、その原因が「新属・新種の渦鞭毛藻」にあることを特定した。また、フグ毒のほうは、「海藻に付着しているバクテリア」が真犯人であると突き止めた。
実は日本人が食用としている海藻も食中毒と無縁ではない。たとえば、オゴノリなどを原因とする食中毒が日本のほか、グアム、フィリピン、ハワイ、カリフォルニアで発生しており、同名誉教授らは藍藻起源なのではないかと推定している(「海産自然毒中毒の最近の傾向」2013)。「加工品での発生はない」ので、食品として売られているものに危険はない。だが採取した海藻は間違ってもそのまま口にしたりせぬよう気をつけたい。
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