中国の不可解なビザ申請条件緩和 マスクに続きワクチン外交展開か

Nabil al-Jurani / AP Photo

◆条件を満たせる人は一握り
 中国はこの決定の目的を「中国と他国との間の人の往来を整然と再開するため」と明言している。だが、よく目を凝らすと、この緩和策を享受できる人は非常に限られていることがわかる。第一に、満たさねばならない「ある条件」とは、「中国の抗Covid-19ワクチンを接種し(規定の期間を置いて2度接種したか、申請の少なくとも14日前に1回目の接種を済ませたか)、ワクチン接種証明書を取得した場合」を指すのだ(在米中国大使館、3/15)。

 対象国には当初より日本も含まれているが、日本で現在流通しているのはファイザー社のワクチンのみ。承認審査中なのも、モデルナ社とアストラゼネカ社のもので、中国のワクチンについては承認申請さえされていない。つまり、条件となる「中国ワクチンの接種」は、日本に住む日本人には不可能だ。

 日本と同じ状況にある国は、ほかにもベトナム、韓国、ルワンダ、ガボン、アフガニスタン、ミクロネシア、イスラエル、クウェート、アメリカ、イギリス、EU加盟国の大半など数多い(ル・プティ・ジュルナル、3/17)。

◆対象国を選ぶ基準が不明
 また中国のワクチンを輸入しているにもかかわらず、対象国リストに載っていない国もある。たとえば、セーシェル、アラブ首長国連邦、セルビア、ブラジル、アゼルバイジャン、コロンビア、ペルー、ヨルダン、ボリビア、マレーシア、ジンバブエ、ミャンマー、ウクライナ、イラン、エジプト、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルネイ、イラク、パレスチナなどがそうだ。もしかしたら遅れて対象国指定を受けるのかもしれないが、これらの国を後回しにして、中国製ワクチンが手に入らないとわかっている日本を含む多くの国を指定するのは不自然ではないだろうか。

 また、EU加盟国、とくにシェンゲン協定加盟国のなかにも、対象国指定を受けている国とそうでない国がある。たとえば、ベルギーやエストニアは対象国なのに、ポーランドやギリシアはいまのところ対象外で、どういう基準で選んでいるのか謎だ。

Text by 冠ゆき