航空界最大のミステリー、MH370失踪 遺族が立てた仮説
◆「真実を知りたい」遺族の切望
機体に乗っていた239人のうちフランス人が4人いた。そのうち3人は家族で、母と子2人だった。つまり夫であるギラン・ワトルロー氏は、妻子3人を一度に失ったのだ。ワトルロー氏の苦しみは長く続き、墜落の痕跡も遺品もない状況で、3人はもういないのだと受け入れるまでに丸2年かかったという。前に進めたのは、周りの支えもあるが、ひとり残った長男の存在が大きい。「人生は美しくありえること、ここから始められることを、息子になにがなんでも見せなければならなかった。(中略)そうして少しずつ、手放した生活を取り戻してきた」(ユーロニュース)。
だが、真実にたどり着きたいという強い思いは、事故当時から変わっていない。当初よりワトルロー氏は、自ら政府要人や各種専門家、ジャーナリストらと連絡を取り、データを収集し、緻密な分析を積み上げてきた。2018年には、その経験を一冊の本にまとめている。
◆ワトルロー氏の仮説
ワトルロー氏の立てた仮説はこうだ。「飛行機に、北京に着いてはならない誰かあるいは何かが乗っていたため、撃ち落とした」もしくは「(MH370が飛んでいたそのとき、その航路の)ゾーンで、アジアやアメリカなど複数の国の軍事行為が行われていた。(中略)そうして何らかの失策、たとえば軍機が民間機に衝突するなどが起こった」(ユーロニュース)。実際このとき、フライトレーダー24のデータには、MH370の周りに多くの機体が見られたという。いずれの場合も「アメリカがかかわっていることは確かだ」と同氏は考えている。
それを裏付けるかのように、アメリカは当初より捜査に非協力的だった。たとえば「飛行機が消えた翌日にはFBIがすでにクアラルンプールで捜索を始めていた」にもかかわらず、「FBIは、公式捜索機関になんのレポートも提出していない」。たとえば、MH370の機長の自宅に行き、そこにあったとされるフライトシミュレーターを押収したのはFBIだが、フランスはいまだその閲覧を許されず、3年前から交渉中だという。
ワトルロー氏は、捜索が始まってしばらくしてから説かれた、飛行機がUターンしたという説にも疑義を唱える。Uターンについては、マレーシアのレーダーによる証拠も、イギリスのインマルサットの通信衛星による証拠も開示されていないからだ。もし本当にUターンしたのなら、「ベトナム、タイ、ミャンマー、インドネシア、シンガポール、インド、オーストラリアなどの国にデータが残っているはず」だ。これらの国がみな示し合わせてデータを隠しているとは考えにくく、Uターンしたという説そのものが怪しいと考える。