英国、南ア、ブラジルの変異株 感染力、ワクチン効果など

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◆南アフリカ変異株
 南アフリカで最初に確認され、12月18日に同国当局によって発表された新規変異株501Y.V2は、「レセプター結合部位として重要な3箇所(K417N、E484K、N501Y)の変異を含む、スパイクタンパクの8箇所の変異で定義される」(NIID国立感染症研究所、1/2)。英国変異株と同じく「N501Yを認めるが、系統としては進化的関連を認めない」(同)とされている。

 イギリス変異株ほどの速度ではないものの、WHOによる20日の発表によれば、少なくともすでに23の国・地域に広がっている。南アフリカ保健省の疫学者で、科学委員会議長のひとりであるサリム・アブドゥル・カリム教授によれば、従来のものより「伝染性が50%高い」が、いまのところ「より重症を引き起こす証拠はない」とされる。しかしながら同国の12月以降の感染第2波は、より若い世代を直撃しており、感染症専門医レッセルズ教授は、この現象が変異株と関係するかどうか見極める必要があると注意を促す(ル・モンド紙、12/21)。

 同株の変異で研究者らが最も注意を払っているのがE484K(484番のグルタミン酸(E)がリジン(K)に変異)だ。なぜならば、E484で起こる変異は、多くの場合「抗体の中和力を弱体化させる」と見られるからだ(フュチューラ・サンテ、1/23)。具体的には、「中和抗体価が10倍ほども低下するという実験データも報告」されている(NIID国立感染症研究所、1/10)。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフランソワ・バルー教授は、「この突然変異により、“以前の感染あるいはワクチン接種によって獲得した免疫保護を(変異株が)回避”できるようになる可能性がある」と言う(フランス・アンフォ、1/20)。

 同変異株に関するワクチンの有効性について発表したのは現在のところモデルナ社だけで、「抗体レベルが6分の1に減少」したことを1月25日に明らかにした。同社はそれでも「(ウイルスからの)身を守るのに必要なレベルを上回る」と考えているが、念のため3回目のワクチン追加投与の影響をテストする考えだ(フランス・アンフォ、1/25)。

Text by 冠ゆき