米議会占拠事件で問われる、メディアと民主主義のあり方
1月6日、米大統領選の投票結果を認定するための上下両院合同会議が開かれていた連邦議会議事堂に、トランプ支持者が押し入り、占拠する事件が起こった。侵入の計画は、ソーシャルメディアなどネット上の公の場で議論されていたことが指摘され、プラットフォームとしてのソーシャルメディアのあり方が改めて問われている。一方、マスメディアは、煽動されたトランプ支持者の言動に関して、その報道の仕方の難しさに対峙した。民主主義国家アメリカにおいて言論の自由は最も重要な国民の権利の一つとして守られるべきであるが、公平な選挙結果という民主主義の結果に抵抗する人々、そして彼らの活動を支援してきたトランプ大統領に対して、メディアが中立的な立場を維持し続けることは難しそうだ。
◆ソーシャルメディアと「言論の自由」
米大統領選の投票結果を認定するための上下両院合同会議は手続き的なもので、通常、とくに注目されるイベントではないが、今回はトランプ大統領や彼を支援する共和党議員が選挙結果と敗北を認めない状況が続いていたため、メディアや関係者は会議が行われた6日の動向に注視していたようだ。しかし、会議が中断し、議員がガスマスクを着けて避難するというような状況は、多くのジャーナリストにとっては予期せぬ出来事であったはずだ。
一方、トランプ支持者がワシントンDCに集結して、抗議行動を行うという計画は、公の目に触れるソーシャルメディア上やウェブサイト上で議論されていたという点が指摘されている。米ワシントンポスト紙のリサーチャー兼ソーシャルメディアプロデューサーであるラザーン・ナクラウィ(Razzan Nakhlawi)によると、トランプ大統領が敗北した選挙を「不正」だとして抗議するための計画は、ソーシャルメディアやトランプ支持者による保守派ウェブサイトで進行しており、12月中旬ごろにはDCに集結するという計画が、1月には議会議事堂を占拠するという計画が具体化していたという。
この計画のやりとりが活発化していたとして、とくに注目されているソーシャルメディアがパーラー(Parler)だ。パーラーは、2018年に現CEOのジョン・メイツ(John Matze)ら3人の共同創業者が立ち上げた。リベラルよりの自主規制が進むツイッターやフェイスブックに対抗する、「言論の自由」のプラットフォームであるということを標榜し、保守派ユーザーに好まれていた。ユーザー規模は1300-1400万人とされており、約27億人のフェイスブック・ユーザーや、10億人のインスタグラム・ユーザー、ツイッターの3.3億人(月間アクティブユーザー数)と比較すると限定的だが、過激な保守派の発言や陰謀論などの温床となってきたと指摘されている。
CEOのメイツは事件が起こっていた6日、ニューヨーク・タイムズ紙のテックジャーナリスト、カラ・スウィッシャー(Kara Swisher)のポッドキャスト・インタビューで、今回の「計画」や扇動がパーラー上で行われていた事実に関しては、自分やパーラーには責任はないと発言している。また、実際に違法行為が行われない限り、規制するつもりはないというスタンスを示した。しかし、その後、パーラーの取引先であるアップル、グーグル、アマゾンらが次々とサービス提供を停止した。パーラーはアップルとグーグルのアプリストアから姿を消し、アマゾンがウェブのホスティング・サービス(AWS)を停止したため、パーラーは現在ダウンしている(これに対し、パーラーはアマゾンに対して訴訟を起こした)。パーラーは現在存続の危機にあるが、パーラーを規制したところで、ユーザーはまた別のアプリやウェブサイトに移行するだけという指摘もある。アルジャジーラは、「言論の自由」が許されるいくつかの類似サービスを紹介している。一方、BBCによると、事後の2日間で、類似サービスのGabは創設から2年かけて獲得した数よりも多くのユーザーを獲得したとしている。
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