インド、農家が警察と衝突 モディ政権の農業改革に反発
インド北部のハリヤーナー州では11月26日、同国で農家を営む数千人が警察と衝突。農業関連法の改正について、農家の収益が減り、企業が優遇される恐れがあるとして、政府に撤回を求めるデモが行われていた。
デモに参加していた農家らはトラクターやバイクで首都・ニューデリーに向かっていたが、アンバーラー付近で警察の妨害を受けると、警官らを川に落とし、レンガや石を投げつけるなどした。警察は催涙ガスと放水銃で応戦し、暴動を鎮圧した。
アルビンド・ケジリワル首都圏首相はツイートで、「農家を不当に扱うような行為であり、公平性を欠いています。平和的な抗議活動は、憲法が認める権利です」と述べている。
また、ニューデリーとハリヤーナー州の境界地点には、デモ参加者の行く手を阻むため、数百人の警官が配備された。
農業に関する新たな法律は、9月に議会で承認された。政府が農作物を保証価格で購入する仕組みを撤廃するもので、農作物を安値で買おうとする企業が農家を搾取する恐れがあると、農家からは懸念の声があがっている。
ナレンドラ・モディ首相率いるインド政府は、今回の新法律について、農作物を市場で自由に売れるようにし、民間投資により農業の成長を後押しすることで、同国の農業改革を実現することを目指したものだと説明している。
この法改正に反発する農家らが集まり、パンジャーブ州とハリヤーナー州の高速道路で、2ヶ月にわたり座り込みを続けている。インド政府は事態の収拾に向け、12月3日に2回目となる交渉を予定しており、農家側の指導者に参加を呼びかけている。1回目の交渉は10月に行われたが、決裂に終わった。
野党と一部のモディ首相支持者らは、今回の法律について、農家をないがしろにし、企業を優遇するものだと批判している。シロマニ・アカリ・ダル党のハルシムラット・コール議員は、法律が議会を通過した数日後、食品加工産業大臣を辞任。同党は、モディ政府が最も大きな信頼を寄せる支持勢力のひとつだった。
農業が人口13億人の半数以上を支えているインドでは、長い間、農家は国の中核を担う存在とされてきた。しかしここ30年間で、農家の経済的影響力は縮小しつつある。かつては国内総生産の3分の1を担った農業だが、現在では、2兆9000億ドル規模の同国経済に農業が占める割合は、15%にとどまる。
農家からは、ないがしろにされているという不満の声がたびたびあがっており、農作物の値上げやローン免除額の引き上げ、乾期に水を確保するための灌漑設備の整備などを求めた抗議運動が頻発している。
国家犯罪統計局によると、インドでは農家の半数超が借金を抱えており、2018年および2019年の自殺者数は2万638人にのぼる。
農家の自殺問題の要因としては、農作物の不作や経済不安、各地域での支援不足などがあげられる。
By SHEIKH SAALIQ Associated Press
Translated by t.sato via Conyac