性的少数者は犯罪被害に遭いやすい 米調査

AP Photo / Damian Dovarganes

 ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイア、性を決めていない人々が犯罪被害に遭う可能性は、それ以外の人と比べて約4倍も高いことが性的マイノリティの人々を対象とした初めての研究で明らかになった。

 LGBTQやジェンダーマイノリティが不釣り合いなほどに犯罪被害に遭っていたという調査は以前にもあったが、10月2日に発行された学際誌「Science Advances」に掲載された論文は、2016年以降に収集されたデータのみを対象とし、この問題を検証する総合的かつ全国的な研究としては初めてのものである。

 それによると、セクシャルマイノリティ、ジェンダーマイノリティと呼ばれる人々は、年間1000人あたり71.1人が暴力被害に遭っていた(マイノリティ以外の人々は19.2人)。

 しかし、アメリカン大学助教授で論文の第一著者でもあるアンドリュー・フローレス氏は、セクシャルマイノリティ、ジェンダーマイノリティがこれほど高い割合でさまざまな犯罪被害に遭っているということのほか、加害者に関する事実に驚かされたという。

 たとえば、マイノリティはそうでない人々と比較して、身近な人による被害を受ける可能性が高いことが明らかにされた。

 この事実は、「事件の性質や被害者・加害者関係の本質に迫る将来の研究に役立つことが期待される、ある種の問題提起になる」とフローレス氏は述べている。

「この問題には、社会化という現象が含まれている。多くの人々は社会に順応させられ、トランスジェンダーやクイアを見下しているのではないか」と、LGBTQコミュニティーを支持する全米団体ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)でトランスジェンダー・ジャスティス・イニシアティブのコミュニティ・エンゲージメント担当ディレクターを務めているトーリ・クーパー氏は述べている。

 HRCが2018年に発表した、アメリカに住む10代のLGBTQ1万2000人以上を対象とする調査では、家族がLGBTQについて否定的な発言をしたと回答した人の割合は67%だった。

 とりわけトランスジェンダーはパートナーや身近な人からの被害を受けやすいとクーパー氏は述べている。HRCでは、今年だけでもトランスジェンダーまたは性を決めていない人が少なくとも30人殺害されたという文書をまとめた。被害者の多くは黒人およびラテン系のトランスジェンダーの女性だった。

「トランスジェンダーが嫌いな人は数えきれないほどいる。それがこうした関係性に表れている」とクーパー氏は話している。

 今回の最新調査では、トランスジェンダーが犯罪に遭う可能性について一定の結論を出せるほど十分なサンプル数を確保できなかったが、フローレス氏によると、とくにトランスジェンダーが犯罪被害に遭いやすいことを示す別の調査があるという。

 そのほか、セクシャルマイノリティ、ジェンダーマイノリティが強盗被害に遭う可能性はそうでない世帯の2倍であるほか、窃盗被害に遭う可能性が高いことも明らかにされた。

 同調査は連邦司法統計局が実施した国内犯罪調査に基づいており、昨年公表された2017年調査に対する回答結果を分析したものだ。2016年以前の調査では、性的指向と性自認についての質問がなかった。

 ところが、研究者が今回と同じような形でデータを再検証できるようになるまでには、しばらく時間がかかるかもしれない。トランプ政権はパブリックコメントを求めることなく、国家犯罪調査の一般人口統計パートから性的指向と性自認に関する質問を省略し、被害者のみを対象とする部分調査に改めると発表した。この決定により、犯罪の格差について研究者が知ることができる情報が限定されてしまう。性自認を被害者に質問するだけでは、暴力被害の遭遇率を国民全体の数字と比較することができなくなるからである。

By ASTRID GALVAN Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP