学校、家庭、仕事で苦心する10代の若者たち 新型コロナ

AP Photo/Frank Franklin II

 まだ幼い弟を腕に抱いたカラ・アプッツォさんは、ベビーが身をよじったり眠ったりするかたわら、オンライン授業についていこうと努力していた。18歳の彼女は大手スーパー「ターゲット」の最前線で働いており、高校のバーチャル授業が終わらないうちに、急いで出勤準備をすることもある。

 昨年度、学校はコンピュータ関連の問題によってより複雑化し、彼女自身もログインできないことがあったほか、オンラインツールにいたっては教師たちも混乱するほどだった。コネチカット州ニューヘブンに暮らすアプッツォさんは、新型コロナウイルスが流行する以前は高校卒業後に大学へ進学することを希望していた。しかしいま、彼女は迷っている。

「いまは、私は人生をどう進めばいいのかわかりません。大学生が実際にどんなことをしているか、と考えると、自分がひどく取り残されている気がして。怖くて、わからないことばかりで、自分がどうしているかさえわかりません」と、アプッツォさんは語る。

 多くの家庭がレイオフや幼い子供の育児に悩むなか、パンデミックによる教育の混乱が10代の若者を苦しめている。9月に新年度が始まり、多くがリモート学習を余儀なくされ、こうした課題はさらに継続すると予測される。

 若い学生のなかには、兄弟とコンピュータを共有したり、にぎやかな家庭内や車の中でオンライン授業に参加したりせざるを得ない者もいる。また、家族を養うために放課後に従事していた仕事を失った、または基幹産業に従事し普段より労働時間が増えた、などの理由で学業に費やす時間が減った者もいる。両親が在宅勤務できない家庭もまた、生徒が勉強するのに必要な環境が不足している。

 コミュニティカレッジでの単位取得を支援する非営利団体「アチーヴィング・ザ・ドリーム」でK-12 Partnership(小中高生の包括的支援)のバイスプレジデントを務めるニック・マザーン氏は、「彼らは自宅で、自らを教師としています」と話す。

 多くの学生にとって高校から大学への進学は困難であり、新型コロナ禍では裕福で大学教育を受けた両親を持つ子供と、低所得者層とのギャップが広がる可能性があるとマザーン氏は言う。

 さらに同氏は、「わが国の不平等の拡大という観点では、本当に危険なことです」と語る。

 マザーン氏のグループはアメリカ国内で数百もの機関や、大学進学を手助けするシステム「ゲートウェイ・トゥ・カレッジ」と連携しており、アプッツォさんもまた彼らの支援を得てパンデミック前よりも成績が向上した。現在、彼女は大学入学前に1年間働くことを予定している。

 マザーン氏は、アプッツォさんをはじめ新たな問題の山に直面する年長の学生たちを支援する方法を見つけ出すには、学校や組織がよりクリエイティブになる必要があると話す。

 19歳のホープ・スパンさんも同様の問題を抱えていた。彼女は学年の最後の数ヶ月間、シカゴに滞在していた。そこで彼女はウィスコンシン州のベロイトカレッジの授業を受けながら、自身の兄弟がそれぞれ「ウォルマート」と「ウェンディーズ」で働いている間、3歳と6歳の姪2人の面倒を見ていた。

 ライティングと美術史の授業の合間に姪2人のけんかを仲裁し、軽食を済ませる。映画デザイナーとして意欲的に働いていた彼女だが、そんな生活で片頭痛とパニック発作に悩まされるようになった。

「これが私の人生の妨げになっているのは、間違いありません。私は自分がすべきことを同時に2つやっています。自分の健康を維持することと、家族を1つにすることです」とスパンさんは語る。

 彼女は現在、老人ホームで仕事を始めており、新年度が始まったらオンラインの授業と仕事を両立させていく予定だ。

 フィラデルフィアでは、18歳のケイラ・ハモンドさんが弟と妹の子守を手伝いながら、2つの仕事をこなしている。昨年、彼女の高校近くで銃撃事件があって以来、ケイラさんは高校と大学の単位を同時進行で取得するという「二重登録プログラム」を始めた。パンデミック中、家に戻って新しい仕事を探していた彼女にとって、化学や中国語の授業は大変だった。彼女はそれを乗り越え、来月リモートでフィラデルフィア・コミュニティ・カレッジに復帰する予定だ。

「友人たちのなかで、まだ学校に残っているのは私だけです。皆、4年制大学に行く夢を持っていました。新型コロナウイルスがそれに待ったをかけたのです」と彼女は言う。

 ニューヨークを拠点とする非営利団体「ソーシャル・サイエンス・リサーチ・カウンシル」のプロジェクト「メジャー・オブ・アメリカ」による最新のレポートでは、16歳から24歳の若者で仕事にも学校にも行けない人の割合が、4人に1人へ急増する可能性がある。これは10年分の利益を消失させるもので、世界恐慌当時の高い水準となる。

 マグナ郊外のソルトレイクシティに暮らす16歳のブリアン・ハーモンさんは、複数の親戚がいる家の中で、オンラインレッスンが受けられる静かな場所を見つけるのに苦労していた。大量の宿題に追われ、彼女は3つのクラスで単位を落とすかどうかの瀬戸際にいた。

 ハーモンさんは当時、「家族を失望させないように、キャリアをあきらめないために、頑張っています。でも、すべてが山のように積み重なれば、それは難しくなります」と話していた。

 そのせいで、彼女は愛するダンスドリルのチームから外されそうになった。彼女は祖母の家に閉じこもり、単位取得のため徹夜で勉強していたが、秋になれば学校がオンラインと対面のハイブリッド式に戻ることになる。

「非常に不安です。でも、いまの生活のなかで安定した何かを得られることにワクワクしています」とハーモンさんは語る。

 数学教師であるミケーレ・ジョーンズ氏は、ハーモンさんのような状況にいる多くの学生から話を聞いたという。

「彼らの話は、本当に悲惨です。3人の弟妹の面倒を見ている、勉強をする時間がない、家が安全な場所だと思えない、両親が職を失った、など。大きなストレスです」

 パンデミックに加え、ジョーンズ氏の生徒はこの春、地震と一時的な給水汚染にも見舞われた。その際はリモート授業の出席率が20%にまで落ちることもあったという。数学教育にとって重要な時期に、この数値は憂慮すべきものだ。

「学習については、取り戻せると思います。私としては、これまでのことが子供たちにとってトラウマになっているのでは、ということの方が心配です。喪失感を味わい、見捨てられたような気持になり、希望を失っています」と、ジョーンズ氏は語る。

By LINDSAY WHITEHURST Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP