ユダヤ人を救った架空の感染症「シンドロームK」
独裁者ヒットラー率いるナチスは欧州各地でユダヤ人を迫害、虐殺したが、イタリアのローマのユダヤ人コミュニティもその標的となった。ユダヤ人たちを救うため、ローマのある病院の医師とスタッフが偽の感染症「シンドロームK(K症候群)」を作り出した。数々のユダヤ人を救った逸話の一つだが、コロナ禍のいま再注目されている。
◆ナチス占領下のローマ、ユダヤ人が連れていかれる
科学・理系サイトのIFLサイエンスは「シンドロームK」の背景を説明している。1943年の7月、イタリアではファシズムによる独裁を行っていたムッソリーニ政権が倒れた。新イタリア政府は連合国側と協力し、以前の同盟国であったナチスドイツに宣戦布告したが、国の北部と首都ローマはイタリア社会共和国として、ナチスの支配下にあった。
反ユダヤ主義は1920年代にムッソリーニが政権を取って以来、国中に広がっていたが、ドイツの占領下で激しさを増した。当時ナチスの支配とホロコーストの恐怖はほぼ欧州全土に広がっており、1943年10月16日にはローマのユダヤ人コミュニティへのナチスによる手入れが始まり、数百人がアウシュヴィッツに送られたという。
恐怖を感じた一握りのユダヤ人家族たちが、自分たちの居住区に近いローマのティベリナ島にあるカトリック系のファーテベネフラテッリ病院に助けを求めた。そこで医師たちとスタッフは、彼らを患者として受け入れた。そして実在しない感染症「シンドロームK」を病名として彼らのカルテに記し、特別病棟を作ってユダヤ人を保護した。
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