「小さな冒険」に脚光 コロナ時代の欧州バカンス
◆プライベートジェット機利用の増加
フランスの富裕層では、制限緩和以来プライベート・ジェット機の利用予約が増加している。全世界の航空会社の運航数が、いまだ通常期に遠く及ばぬ状況にあるなか、プライベート・ジェット機を運営するプライベート・フライ社では、6月の時点ですでに「運航数が通常の75%」にまで戻り、その後も予約は増え続けている(キャピタル誌、7/22)。
同社によれば、行先は「フランス南部か、(地中海の)バレアレス諸島が圧倒的」(キャピタル誌、6/25)で、多くは「大きな空港や旅客機利用での人混みを避け(中略)、別荘か(中略)貸家でバカンスを過ごすため」利用するパターンだという(キャピタル誌、7/22)。
ちなみに、パリから南仏ニースまで4人乗りのプライベートジェット機での片道料金は6700ユーロ(約83万円)。一人あたり片道21万円の計算だ。またパリから地中海のスペイン領イビザ島までは、13人乗りのプライベート機なら片道料金は1万7500ユーロ(約217万円)。一人17万円の計算となる。高いと思うか安いと思うかは、新型コロナウイルスの流行次第ということか。
◆一風変わった宿泊施設
他人との接点を避ける向きが多いことから、貸しアパートや貸家のほか、一風変わった宿泊施設も注目を浴びている。ベルギー北東部では、木の上に吊り下げられた涙型のテント宿泊施設の予約が、例年よりずっと早くいっぱいになったという。ウィズコロナ時代においては、完全に孤立した空間は、孤独よりも安心をもたらすのだろう。また、町の観光局長は、「政府が出した自国内を旅行しようというガイドラインも予約増加の理由だろう」と考えている(ロイター、7/8)。
今夏のバカンスを自国で過ごすヨーロッパ人は、ベルギー以外でも増えている。レ・ゼコー紙(6/24)が紹介する統計によれば、フランス人の86%は今夏は国内旅行をすると答えており、2019年の75%と比べて11%も多いことがわかる。逆にフランスの宿泊施設のフランス人以外の予約数は減少傾向にあり、フランスを旅する外国人は、例年より少ないことがわかる。『ル・プティ・ジュルナル』(6/23)によれば、イタリアも同様で、「(イタリア)半島の住民は、自国の再発見を選択」しているという。
◆ミクロ・アヴァンチュールの流行
ミクロ・アヴァンチュールとは、そのまま訳せば「小さな冒険」という意味だ。一言でいうと「遠くに行くことなく、日常から離れた経験、スポーツ体験をする」ことを指す(ロプス誌、3/8)。たとえば、セーヌ川を50kmパドルで下ったり、手製のイグルーで山に眠る体験をしたり、星を見ながらの森でのビバークなど、L’ADN誌(6/25)が挙げる例も多様である。地の果てまで行かずとも冒険が可能であることを悟らせてくれたミクロ・アヴァンチュール。「Covid-19以前に生まれた傾向」ではあるが、パンデミックという爆弾を抱えるこの夏、さらにクローズアップされつつある。
こうしてみるとやはり、交通手段、宿泊施設、旅の行先、アクティビティ、いずれにおいても、他人との接触をなるべく避けるバカンスを人々が目指していることがよくわかる。ウィズコロナ時代の休暇は、家族の絆を深める反面、新たな出会いの難しさをはらんでいるともいえるだろう。
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