スコットランド独立問題がコロナで再燃 対策できないイングランドに不信感
イギリスは新型コロナ対応で迷走し、これまでに死者4万5000人以上を出している。1日の感染者数は7月26日付で747人、死者も14人だが、スコットランドでは同日の感染者数は4人、死者ゼロでほぼ封じ込めた形だ。英政府の方針より厳しい対策を取って感染を抑えたスコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相の評価が高まっており、イギリスからの独立を支持する人も増えている。
◆ハードルはイングランド、スコットランドの不満
イギリスは、感染拡大初期にウイルス封じ込めは困難とし、距離を取るなどの緩和策をしながら集団免疫を目指すとしたが、批判を受け3月23日にロックダウンに転じた。しかしロックダウン開始の遅れや介護施設などでの高齢者の感染拡大、検査体制の不備などが重なり、多数の犠牲者を出す結果となった。ジョンソン首相のあいまいで矛盾したメッセージがもたらした結果だという批判も聞かれる。
感染者や入院患者数が十分に減少しないまま、英政府は5月から徐々に規制を緩和し始めている。ジョンソン英首相の拙速とも思えるロックダウンの緩和を支持する専門家やビジネス界のリーダーたちも多い。経済を迅速に回復させることが、コロナ危機によって社会や公衆衛生が受けた甚大な被害を減らすにはきわめて重要と考えているからだ(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。
しかしスコットランドは、規制解除には慎重だ。健康に関する権限は英政府から委譲されているため、自治政府は独自の対応を取ることができる。いまもイングランドが解除した規制を残し、マスク着用を全国に先駆けて義務化するなど警戒を緩めていない。イギリスのコロナ対策におけるスコットランド政府のアドバイザーの一人で、エジンバラ大学のデヴィ・スリダー教授は、ここ数週間で、スコットランドは感染者ゼロ戦略に転換したと述べる。しかし、ウイルスの市中感染を許容している英政府の方針は、この戦略に支障を与えるとし、緩いイングランドへの国境が解放されていることで、封じ込めができなくなっていると主張している。
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