なぜ日本人の英語力は伸びないのか?
◆間違った英語の許容 日本人的考えの弊害も
20世紀を通し、日本語のなかに英語の外来語が導入され、英語の看板、スローガン、広告、そして使用者は増えた。英語は強いアメリカとエリートを強く連想させ、高いステータスが与えられてポジティブに捉えられたとマルゴリス氏は述べる。
ところが、これがいわゆるカタカナ英語や間違った英語を広めてしまったという見方もある。CNNは、日本人にとってlとrの発音の違いが難しくしばしばEnglishがEngrishになってしまうこと、また広告などに使われた英語の綴りが間違っており、英語話者にとっては謎の英語になっていることなどを上げている。日本人にとっては、英語がおしゃれなデザインの一部になっており、間違いをそのまま使うことを多くの人が気にかけないとしている。東洋大学の田口賀也氏は、そもそも日本人の多くは日常英語を使わなくても生きていける環境にあると指摘しており、CNNはそれが文法的間違いやおかしな表現などがいまだに欧米人向けの英語にさえ見られる理由ではないかとしている。
学校での英語教育が大学受験に繋がっていることも生徒の習熟度の低さにつながっているとマルゴリス氏は指摘する。また、日本人のリスクを避けるといった文化も、影響しているとする。とくに話すことに消極的で、クラスのなかにもっと英語を学びたいという生徒がいても、ほかの生徒が参加したがらないということがしばしばだという。東洋大学の田口賀也氏は、英語を話したくても授業中に目立つのを嫌うという古い習慣が改まらないことも問題視している(フォーリン・ポリシー誌)。
◆グローバル化、人口減少 英語力アップは待ったなし
マルゴリス氏は、英語熱の高さにもかかわらず、日本では英語学習に対する抵抗が多いとする。今後外国人が増えるといっても日本に働きに来る人の多くはアジア人であるし、日本は海外貿易の依存度が世界でも最も低い国の一つであるため、英語力がなくても経済を回していけるという見方があるという。また、英語力が日本においては出世に寄与しないという研究もある。同氏は、日本では英語の前に、若者の日本語力の低下を危惧する声もあり、どちらを優先するかという問題も日本の英語の未来を予測しづらくしていると述べている(フォーリン・ポリシー誌)。
名古屋大学のLiang Morita氏は、日本が世界のほかの国々との関係を望まないのなら、英語は必要ないだろうと述べる。しかし、大企業は国内市場だけでは成長は望めず、結局は英語が必要になるという意見だ。マルゴリス氏も人口減少という傾向を考えれば、英語なしでは世界経済の競争に置いていかれるとし、選択の余地はほぼないとしている(同上)。
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