「アメリカでは二級市民」アフリカやアジアに移住する黒人たち

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 ミネソタ州ミネアポリスで発生した白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドさん殺害事件で、アメリカの黒人たちの不満が一気に爆発した。その感情は、突然勢いを増した「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動や、抗議デモから派生した暴動などからも見て取れる。

 ジョージ・フロイドさんの事件の前にも、今年2月、ジョギング中に「怪しい」という理由だけで白人親子に射殺された黒人男性アーベリー・アーマードさんや、3月に就寝中に間違ったアパートに押し入った警官により射殺された黒人女性ブリオナ・テイラーさんの事件があった。そしてその後にも、ニューヨークのセントラル・パークでバードウォッチングをしていた黒人男性が、公園内でリードをつけずに違法に犬を走らせていた白人女性を注意したところ、逆上した女性が「黒人男性に襲われた」と警察に虚偽の通報をした事件もあった。ちなみに、男性はこの一件をビデオで撮影し、男性の妹がソーシャルメディアで拡散したため、虚偽通報した女性は勤務先を解雇された。

 1863年に奴隷としての地位から解放され、1964年に人種差別を禁止する公民権が施行された後も、アメリカ国内ではいまも黒人市民に対する差別が横行している。人種差別の現状を変えていこうとする抗議運動が盛り上がる一方で、アメリカに見切りをつけて他国に安住の地を求める人々もいる。
 
◆先祖の故郷に帰るアメリカの黒人たち
 アメリカに住む黒人の先祖はもちろんアフリカ出身だ。日系人が日本に親しみを覚えるように、アフリカ文化に親しみを覚え、アフリカを訪れたり、移住したりするアメリカの黒人たちも多い。

 アルジャジーラ(電子版)は2018年、アフリカに移住したアメリカの黒人たちについて報道。アフリカのガーナやセネガル、ガンビアなどの国には、サンフランシスコやニューヨーク、シカゴなどの大都市から移住した黒人のアメリカ人が数多く存在するという。なかでも、ガーナの首都アックラには3000~5000人が居住している。

 同記事によると、ニューヨークからガーナに移住した黒人女性は移住の理由として「学歴も職歴もあるのに、アメリカではいつも二級市民のような扱いを受けていた」「ニューヨークのような場所で暮らしていても、黒人はいつもアウトサイダーだ」と話している。

Text by 川島 実佳