米でも爆発 抗議デモの根底にある若者の不満・怒り

Jason Lee / The Sun News via AP

◆グローバル課題としての若者の経済的不満
 そして、近年各国では今回の米国と同じような状況が見られる。トランプ政権と対立するイランでは昨年11月、政府によるガソリン価格の値上げ決定に端を発し、若者らによる反政府デモが国内100ヶ所以上に一気に拡大した。デモ隊は警察署や銀行、ガソリンスタンドなどを次々に襲撃し、多くの店で略奪行為が発生した。イラン政府は6月1日、一連のデモによる死者数は最大で225人と発表したが、欧米各国や人権団体はもっと多いとみている。

 また、南米チリでも昨年10月、政府の地下鉄運賃の値上げ決定に反対する抗議デモが国内各地に拡大した。抗議デモに参加する若者らは首都サンティアゴなど各地で治安当局と激しく衝突し、これまでに20人以上が死亡、500人以上が負傷したともいわれる。

 当然ながら、各国によって経済・雇用事情は違うので一概に比較はできない。だが、近年各国で発生する抗議デモ、暴動をみてくると一つの共通点があるように思う。それは、「なぜ大学も出たのに安定した職に就けないのか」「なぜ同じ学歴なのに、友人は裕福で俺はそうではないのか」「同じ世代なのに、違う国の若者は平和に豊かに楽しく暮らしている」といった声だ。

 SNSの発達やスマートフォンの普及によって、あらゆる情報で自分と他者を比較することは容易となり、外国の画像や動画も瞬時に手に入る。そうやって、羨みや劣等感、絶望感などを抱く若者が増えても決して不思議ではない。文化や言語、人種は違えど、テクノロジーが進んだ時代に生きる若者が持つ経済的不満というものには国境がなく、同じ現象が各国で見られる。若者の経済的不満は、地球温暖化と同じようにグローバルな課題と捉えるべきだろう。

Text by 和田大樹