死者4000万人、史上最悪の感染症「スペインかぜ」とは?
♦︎日本では冬季に大流行
スペインかぜは日本では1918年の11月に全国規模の流行となり、以降3年間で2380万人がり患した。当時の人口規模を考慮すると、この数字は日本人の実に半数に相当する。死者数は38万人を超えており、致死率はおよそ1.6%に達した計算になる。
国内死者数のおもなスパイクは二度で、いずれも冬季に発生している。一度目は1918年の11月をピークとするもので、スペインインフルエンザによる死者数は前月からにわかに増加し、11月には4万4000人に達した。翌2月から3月にかけてわずかにぶり返しているものの、おおむね順調に減少傾向に転じ、夏ごろまでには死者はほぼ確認されなくなっている。同年末ごろからは二度目の急増となり、翌1920年の1月の3万9000人をピークとして、こちらも夏までに順調に減少した。
♦︎死亡年齢層に特異な傾向
通常の感染症では子供と高齢者の死亡率が高い傾向が出るが、スペインかぜにおいては20歳から30歳と比較的若い層の死者が目立った。この原因は現在でも解明されていない。この傾向は世界的にも同様で、死者の99%は65歳以下である。
今日ではA/H1N1亜型と呼ばれるインフルエンザウイルスが原因であったことがわかっているが、当時はウイルスによる感染症とは考えられていなかった。さらに当時は、抗生物質が発明される以前の時代である。対策としては患者を隔離するほか、積極的な消毒やいまでいうソーシャル・ディスタンスの確保など、基本的な予防策に限られていたようだ。オーストラリアや一部の島国において、徹底的な検疫などにより、ウイルスの上陸を長期間遅らせピークの回避に成功した事例はある。しかしそれ以外の多くの国では、一度国内侵入を許すと二度以上にわたって流行が発生する事態となっている。このこともスペインかぜの大きな特徴となった。
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