新型コロナ感染時、避けたほうがよい補助食品 仏当局「免疫反応を妨げる恐れ」
◆イブプロフェンとアセトアミノフェン
ところで、ANSESは、上にあげた植物は「(イブプロフェンのような)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と同じ働きをする」と考えている。イブプロフェンが新型コロナウイルス感染にもたらす影響についての見解は、いまのところ各国機関によりまちまちだが、ここにそのいきさつをまとめる。
フランスの厚生相オリヴィエ・ヴェランは3月14日、「イブプロフェンやコルチゾンなどの抗炎症薬は、(新型コロナウイルスの)感染悪化の要因となりえる。発熱の際はパラセタモル(訳注:アセトアミノフェン)を服用するように」とツイートした。この投稿への反応は大きく、合計4.3万回ものリツイートで、あっという間に世界中が知るところとなった。日本でも、アセトアミノフェン鎮痛剤の売り切れが引き起こされたほどである。
これを受け、世界保健機関(WHO)のクリスチャン・リンドマイヤー報道官は3月17日、「当面の間、自己投薬の際は(中略)イブプロフェンではなくパラセタモルの使用を推奨する」と発言した(ストレーツ・タイムズ、3/17)。しかしその2日後にあたる3月19日、WHOは公式アカウントで「現在における情報に基づき、イブプロフェン服用を控える勧告はしない」と発表している。
ル・モンド紙(3/16)は、神経科医でもあるヴェラン仏厚生大臣の先のツイートは、医学誌『ランセット』に3月11日に発表された論文に基づくと報道している。同論文は、高血圧および糖尿病患者の新型コロナウイルス感染リスクを考察するものだが、そのなかで「(新型コロナウイルスは)アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を介して標的とする細胞に結合する。(中略)ACE2は、チアゾリジンジオンとイブプロフェンによっても増加する」と記述しているのだ。
新型コロナウイルスとそれが引き起こすCovid-19にはまだまだ謎が多い。消炎効果をもつ植物やイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬が、新型コロナウイルスの感染を悪化させたという症例はまだ報告されていないようだが、転ばぬ先の杖。どちらも頭の片隅に留めておきたい情報である。
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