スイスでも頼みの中国人観光客 嫌悪感を抱く人も
◆お金持ちの国スイスでショッピングしたい
これだけの人数を受け入れるのは大変だとはいえ、巨額が観光業界を潤して、スイスにとって喜ばしいことだったろう。この中国人一行のおかげで、ルツェルンだけで4億5千万円の利益を得られた(宿泊は別の都市だったため、ホテル代は含まれていない)(ノイエ・ルツェルナー・ツァイトゥング紙)。
中国人観光客たちは、ルツェルンで買い物の時間も取った。中国人観光客が大概の他国からの観光客より気前がいいのはスイスでも知られている。だが、とくにスイスで出費が多いというのは注目されていないかもしれない。その様子は、中国の大手決済サービス、アリペイのデータからうかがえる(スイスの経済紙ハンデルス・ツァイトゥング)。
アリペイは、2017年からヨーロッパの多くの店舗でも使えるようになった。中国のゴールデンウィークにあたる10月は中国人にとっては旅行の時期で、2019年のその時期、中国人観光客はスイスで1人あたり約18万円アリペイ決済した。他国では、平均4万円しかアリペイ決済しなかった。スイスでは高級時計など、ラグジュアリー品を買い求めるからだという。同紙には、具体的には隣国ドイツとの比較が載っているだけだが、ドイツで中国人観光客が最も買い物をする場所はドラッグストアチェーンだという。
上海のマーケティング業ジェントルマンは、「中国人観光客は、ラグジュアリー品を買ったり、ショッピングツアーで出費することを惜しまない。中国では、スイス旅行は、幸福とか富と似たような意味合いになる。非常にお金がかかるスイスは憧れの旅行先であり、裕福な中国人観光客たちがとても好きな国だ」と指摘している。
日本人にとっては、スイスといえばハイジの世界(美しい自然)のイメージがとても強いが、中国人にとっては、物価高で、かつ暮らしやすい点も相当魅力なのではないか。インセンティブ旅行の参加者たちも、自分はお金持ちの国に旅行できるという満足感にひたりきったことだろう。
◆スイスでスキーをしたい
スイスでスキーをするのも彼らにとっては魅力だ。2022年の北京冬季オリンピックを控え、中国では冬のスポーツ(スキー)に関心が高まっている。
実際、どのくらいの中国人が冬(冬季)にスイスを訪れるのかというと、グラフが示すように、中国人観光客全体の3割以上を占めている。すべての中国人観光客がスキーをするわけではないにせよ相当な数だ。
スキーは中国に近い日本でもできる。日本はスキー場が多く、スイスの2倍もあるのに遠く離れたスイスでスキーをするのは、憧れの国だからだろうし、スイス政府観光局が本腰で取り組んでいるからでもある。スイス政府観光局は、20年以上前に、ヨーロッパ初の観光局として中国に支所を開き、5年ほど前から「冬のスイス」をアピールしている。「ファースト・スキー・エクスペリエンス」というスキー講習も西側のスキー場を中心に用意している。