電子たばこ健康被害:米当局、患者利用のブランドを発表
全米各地で発生している電子タバコの一種「ベイプ」の健康被害を調査しているアメリカの保健当局はこのたび、入院患者らが最も多く使用していたベイプブランドのリストを初めて発表した。
肺疾患に陥った2,300名近い患者のほとんどは、大麻の快感誘発物質THCを含むベイプリキッドを使用していた。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、昨年12月6日に報告書のなかで、患者らが最もよく利用していたベイプ製品のリストを発表。一部の患者らは、複数種類のベイプを使用していた。
全米各地の入院患者のうち56%が、「ダンクベイプス」というブランドを使用していた。
ダンクベイプスは、単独企業によるライセンス製品ではなく、中国のインターネットサイトから購入できる空のカートリッジだ。違法なベイプカートリッジ製造者らが、この空のカートリッジを購入し、さまざまなリキッドを充填して販売している。
CDCが発表したリストのトップに名前の挙がったその他の製品としては、TKO(15%)、スマートカート(13%)、ローヴ(12%)がある。
「一連の健康被害の原因が、一つのブランドのみである可能性は低いと思います」と、今回の調査に関わったCDCの上級職員、ブライアン・キング氏は述べている。
CDCのリストに名前の挙がったブランドの一部は、大麻が合法の州でベイプ製品を販売している。ところが、これらの合法ブランド製品の偽物が全米各地の市場に氾濫したことから、各社は一部製品のパッケージデザインの変更を余儀なくされた。
TKOプロダクツ社の設立者の一人、ビル・ラウクス氏によると、同社はカリフォルニア州内の認可薬局のみを対象に販売を行っている。にもかかわらず、それ以外の場所で購入したTKOブランドのカートリッジに関する問い合わせメールが同社に届いているという。「もしあなたがカリフォルニア州外で買ったとしたら、それは間違いなく偽物です」と、ラウクス氏はメールで述べている。
またCDCは、昨年12月6日、健康被害多発の最悪の時期はおそらく過ぎ去ったとも語る。CDC職員によると、入院患者数は同年9月中旬がピークで、それ以降は減少していることを示すデータがあるという。
CDCとしては、患者の発生数が減少している確証を得るためにさらに多くのデータが必要だという。もし仮に減少が事実であれば、ベイプの使用に対する世間一般の注意の高まりや、おそらくカートリッジメーカー側が製品の成分を変更したことなど、そこには複数の理由が関わっている可能性があるとキング氏は指摘する。
しかしながら、健康被害の発生は完全には終息したわけではない。2019年12月までの約1年間で2,291名の健康被害が報告されており、この数字には、同年11月下旬に新たに追加報告された176名の患者も含まれる。アメリカ国内のすべての州で健康被害の報告があり、25州およびコロンビア特別区で、ここまで計48名の死亡が報告されている。
具体的な症状としては、呼吸困難、胸痛、疲労感、嘔吐などがある。患者の約半数は、10代から20代前半の若者たちだ。
ベイプの使用による健康被害が最初に報告されたのは、2019年3月とみられている。その後のCDC当局の調査で、背景にはTHCカートリッジの闇市場があることが徐々に浮かび上がってきた。
健康被害を受けた約1800名の入院患者を対象とした分析によると、約80%の患者が少なくとも1種類のTHC製品を使用したと回答している。CDC当局者は先年11月、原因と疑われる物質が1つに絞りこめたという。それは「ビタミンEアセテート」と呼ばれる化合物で、患者の肺および患者らが使ったベイプ製品の中から広く検出された。
ビタミンEアセテートは、違法なTHCベイプカートリッジのリキッドに添加された増粘剤だ。しかしキング氏によると、これ以外の大麻抽出物のCBDを含むベイプカートリッジのリキッドにも、同じ物質が添加されていた可能性があるという。実際、患者のうち約1%は、CBDベイプ製品しか使用していなかったと述べている。
CDCは、THCを含む電子タバコやベイプ製品は一切使用しないこと、とりわけ友人や家族、闇市場のディーラー経由で入手した製品は使用しないよう勧告している。しかしながら、患者のうち13%は、ニコチン含有のベイプ製品しか使っていないと回答しており、CDC当局はニコチン含有ベイプ製品に関する調査を現在も継続中だ。キング氏は、この調査が完了するまでは、あらゆる種類のベイプ製品に対して注意が必要だと述べている。
By MIKE STOBBE AP Medical Writer
Translated by Conyac