ゴーン氏も安泰ではない? 逃亡先レバノンが抱える数々の問題
◆抗議デモ拡大、消えない腐敗と不平等
レバノンでは昨年10月中旬から反政府抗議デモが起こっている。政府が導入を試みたWhatsAppアプリでの通話への課税に対する抗議デモがきっかけで、いまや数十年に及ぶ腐敗と経済のかじ取りの失敗への抗議となっている。ハリリ首相が10月29日に辞任し、新内閣が数週間後に発足する予定だが、腐敗追放を求めて国民の抗議は続いている。
さまざまな宗教や宗派があるレバノンでは、宗派ごとに権力を分散するのが平和維持の唯一の方法だと考えられており、これが公的資金の割り当てや仕事の獲得にまで影響するとMounzer氏は解説する。結局有力者とその取り巻きだけが常においしい思いをし、市民のニーズは後回しだという。失業は蔓延し、GDPの25%は上位1%が稼ぐという、世界で最も不平等な経済の一つになっている。
レバノンのロビー団体のディレクターは、これまで国内に莫大な金が落とされたにもかかわらず、インフラもなく、生産的なセクターも生まれなかったと主張。すべてが輸入と不動産に使われ、バブルでしかないと話している(FT)。
◆もはや経済はフリーフォール、IMF行きも間近
レバノン経済の主力である観光業も、抗議活動の激化で打撃を被っている。観光業の低迷は、2011年に始まったシリア内戦の影響もあるが、抗議活動が始まってからは、数百件のレストランが閉店している。ホテルの稼働率も10月には100%から4%に急落し、11月には10%と低迷している(AP)。
1997年から通貨レバノンポンドは米ドルにペッグされ1ドル1500ポンドとされており、市民はレバノンポンドとドルを相互に利用してきた。しかし抗議活動が勃発後、ドルが次第に手に入らなくなった。政治的不安定から預金を下ろす人が増え、1975年から1990年の内戦以来最悪の経済危機に油を注いでいる。地元の銀行はいまだかつてない資本規制をしており、これが経済を悪化させ、給料を従業員に送金できない企業もでている(同上)。
レバノンの元経済相は、金融危機から抜け出すには、IMF(国際通貨)も含め、200億~250億ドル(約2.2~2.7兆円)の緊急融資が必要だとロイターに話している。
前出のアラミ氏は、失業、倒産は今後数ヶ月で拡大し、ドル不足、ハイパーインフレ、基本的物資の不足を増大させるとする。これらは今後待ち受けている多くの危機の一部に過ぎないとし、経済的プレッシャーはさらに市民を街頭へ駆り立て暴力的トレンドを広げるだけで、レバノンの状況に希望はないとしている。
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