ゴーン氏も安泰ではない? 逃亡先レバノンが抱える数々の問題
日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン氏の逃亡先として注目されるレバノン。首都ベイルートは「中東のパリ」と呼ばれ、自由な環境のもと繁栄したが、1975年に始まった内戦で破壊された。内戦終結後は、ゴーン氏のような富裕層が集まる都市としてかつての輝きを取り戻したが、最近は経済成長が減速し、莫大な債務、政治の腐敗、格差の拡大が問題となっている。
◆不況の始まり 復活の裏にあった手法が裏目に
カーネギー国際平和基金のサイトに寄稿した大西洋評議会のモナ・アラミ氏によれば、レバノンは内戦終結後の1990年代初頭に大規模再建プロジェクトを行い、観光業、不動産、金融のハブとして復活した。しかしロイターによれば、レバノンは今年この20年で初めての景気後退に入るとされている。GDPは2%も縮小し、長い不況に突入するという見方もある。
危機は突然やってきたものではない。内戦が終わり、当時の政府は国家再建のため、高い金利で海外、とくに産油国からのオイルマネーを集めることに集中した。結果としてこれが成功し、人と金がレバノンに戻ってきた。以後政府はこの手法を続け、アラミ氏の言う、不労所得者経済に依存することになる。
ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したレバノン在住のライター、Lina Mounzer氏は、レバノンの商業銀行は大口預金者に法外な利息を約束し支払ってきたが、その元手はリスクの低い政府に金を貸すことで得た利息だと述べる。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、レバノンの商業銀行が中央銀行に預けた預金は、2017年から2019年の間に70%以上増加しているという。当然しわ寄せは納税者の国民に行くわけで、これは壮大なポンジ・スキーム(ねずみ講のような出資金詐欺)だとMounzer氏は批判。国の負債は増大し、もはや持続不可能だとしている。
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