妊婦の大麻使用に健康リスク、表示義務付けへ カリフォルニア州
カリフォルニア州議会は12月11日、妊娠中の女性が大麻の煙および主要成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)を摂取することで、妊婦自身と胎児の健康を損なうリスクがあると表明した。アメリカ最大の大麻市場と言われる同州で、合法的に販売された大麻製品に警告表示を記載することが義務化される。
薬物の毒性と生殖・発育との関連性を調査する専門委員会による今回の決定は、1年間の猶予期間を経て発効される見通しだが、拡大を続ける同州の大麻産業への打撃は未知数だ。
同委員会では9名の科学者が数時間かけて議論を交わし、マウスやラット、魚を含む動物や人を対象とした実験の信頼性と正確性を検証したうえで、可否投票が行われた。
近年、妊娠中のつわりや頭痛といった不快症状を緩和させるため、大麻製品を利用する妊婦が増えているという。実際の調査でも明らかになっているが、その効果について科学的根拠は証明されてない。
2009年以降、カリフォルニア州では大麻の煙は、タバコの煙と同様の発がん性があることが知られている。今回の決議により、「先天性欠損症やそのほかの発達上の問題を引き起こす恐れのある化学物質リスト」にTHCと大麻が追加され、警告ラベルの表示が義務づけられる。
大麻業界の関係者は、今回示された研究結果は根拠として不十分であり、大麻と関連性が不明の妊婦や胎児の疾患まで「大麻のせい」と不当に訴えられる恐れがある、と警告している。
カリフォルニア州法務局の合法大麻擁護団体「カリフォルニアNORML」のエレン・コンプ副所長は同委員会に対し、今回の研究は調査対象を「大麻を吸引した女性」に限定したものであり、蒸気吸入や蒸気、局所的なローションなど、別の方法で使用した女性は調査していないとしないと主張。今回の研究が「矛盾する結果を生み出した」と総括している。
一部の研究では、妊婦の大麻使用頻度や具体的な製品が明らかにされていないほか、大麻とタバコを併用している場合など、研究成果の正確性が十分考慮されていないケースもみられた。また、妊婦自身の自己申告に頼る研究も含まれており、情報の信ぴょう性が問われている。
委員会では数時間かけてこれらの研究について議論しており、最終的に証拠が十分有効であると結論づけている。
今回の調査は、プロポジション65として知られる「安全飲料水および有害物質施行法」のもとで実施された。この法律によると、危険と判断された化学物質には警告ラベルの貼付が義務づけられ、違反した場合は住民や擁護団体、弁護士が州に代わって訴訟を起こすことができる。
1986年に制定されたプロポジション65は、製品から発がん性物質を排除した功績が認められる一方、合法的な脅迫の場を提供しているのでは、という負の側面も指摘されている。
大麻の業界団体であるユナイテッド・カンナビス・ビジネス・アソシエーションのリーダーであり、ロサンゼルスで薬局を経営するジェレッド・キロー氏は、安易に稼ごうとする弁護士が「1万ドル払わなければ、長い裁判になるぞ」などと脅してくるだろう、と話す。
カリフォルニア大麻産業協会はこうした懸念を何度も提言し、連邦レベルで大麻を違法薬物とすることで、政府機関による研究が停滞したと指摘する。協会の広報担当者、ジョシュ・ドレイトン氏は「優れた政策と消費者の保護は、事実とデータに基づくものだ」と述べている。
アメリカの公衆衛生局長官は8月、大麻使用が妊婦と胎児の健康リスクにつながると警告した。医学界では早産、低出生体重など健康上の問題を引き起こす恐れがあるとして妊娠中の大麻使用に反対しているが、そうした研究の多くは人間以外の動物を対象にしたものや、議論の余地がある発見を根拠にしている。
国立薬物乱用研究所は、妊娠中の大麻使用に関する複数の研究に対し、資金援助を行っている。専門委員会の決定により、大麻全面容認のカリフォルニア州での大麻産業に影響が出るのでは、と懸念が生じている。
1年間の猶予期間中に、州当局は重大な健康被害につながりかねない曝露量などを把握し、警告ラベルが必要なリスクのレベルを決定することになる。
今後、大麻製品は妊娠中の女性向けの警告を記載しなければならないため、パッケージの変更を余儀なくされるだろう。しかし、そうした要件は、大麻規制と包装を監督する機関から追加の措置を講じられる可能性もある。
すでに州法では、妊娠中または授乳中の大麻使用が「有害の恐れあり」という警告文を商品に記載することが義務づけられている。
現在、大麻や麻から抽出したCBDを含む製品が流行しているが、それらにも微量のTHCが含まれることがあるという。
By MICHAEL R. BLOOD Associated Press
Translated by isshi via Conyac