パリへの道をトラクターで封鎖、農家が政府の政策に抗議 フランス
11月27日、フランスで不満を持つ農家が停滞する収入と不公平なグローバル競争に対して抗議を行った。パリの環状道路を、大量のトラクターが二列になってゆっくりと移動した。
全国各地から集結した農家が1,000台のトラクターを動員してパリへの入口を封鎖したため、パリの街は朝から夕方にかけて混乱した。農業の伝統と基準の順守をめぐりヨーロッパ全域で同じような懸念が広がっており、最近はフランス以外でも抗議活動が起きている。
地域農業組合の広報担当を務めるエリサ・デスピニー氏はAP通信に対し、「マクロン大統領と抗議メンバーの会談が実現するまでは、トラクターによる環状道路の封鎖を続けるだろう。何時間でも、何日でもその場に居続ける」と語っている。
「マクロンは答えよ!」と書かれたプラカードを掲げ、青と緑のトラクターがパリ西南端に向かって動き出した。警察のバイクが先導するなか、高速道路の二車線を占拠した。すると環状道路でトラクターを停め、一部の抗議者たちがその場でテントを張って火をつけた。
他方、市内を歩いて抗議活動をする人もいて、シャンゼリゼ通りを封鎖し、パリの有名な目抜き通りに干し草をまき散らした。警察は凱旋門の下に集まっていた農家の一団を取り囲んだが、暴力騒動には発展しなかった。
フランス大統領府は、マクロン大統領と農業関係者代表との会談は予定していないとコメントしたが、ディディエ・ギヨーム農業・食料大臣は27日の夜、農家の集団と会合を持つことで同意した。
農家が不満を持つ原因には、自分たちを不利な立場に追いやるとみている自由貿易協定、収入増につながらない政府の改革、生産性が悪化するとみられる農業規制などがある。
パリ地区の農業組合代表を務めるダミアン・グレフィン氏によると、農家が不満を持つのはひとえに大統領のせいだという。彼はBFMテレビとのインタビューで、大統領を「亀裂を生み出す人物」と評した。フランス国民が農業従事者を支援するよう、大統領は呼びかけを行うべきだと主張している。
農家はとりわけ、フランス農業の支援を目的として昨年成立した法律を批判している。政府が公約した収入の増加は実現していないという。
また、殺虫剤の使用や家畜の扱いを非難する人が典型的な例だが、農家に対して一般の人々があからさまに敵意を抱く「農業バッシング」にも怒りの声を挙げている。
エソンヌ県で農業を営むアントワーヌ・ベノア氏(44)は次のように語っている。「使用している植物保護製品や家畜の保護について絶えず誰かから攻撃を受けることなく、仕事がしたいだけだ。私たちは誰よりも未来を気にかけ、自分たちの健康や子供たちの健康、動物福祉を考えている」
ギヨーム農業・食料大臣は11月27日、「Europe 1」のラジオ番組で農家の怒りと抗議活動に支持を表明した。「絶え間ない中傷や住民と農家の亀裂を目の当たりにするのは、もうたくさんだ」と語っている。
大臣は昨年成立した農業法を擁護しているが、まだ2年間の実験段階にあり、農家が成果を実感するには少し時間がかかるという。
主要な農業組合は国中で抗議活動を組織化し、リヨンでも同じように600人の農家が120台ほどのトラクターを動員して市中心部への3つの入り口を封鎖した。パリとリヨンの警察は、閉鎖された道路を迂回するようドライバーに呼びかけた。
フランスで起きたようなデモ活動は、11月26日にドイツでも発生した。1万人の農家が5,000台のトラクターでベルリンに繰り出し、ドイツ政府による農業政策に抗議した。オランダでも先月、国内で窒素汚染を発生させたという、いわれなき非難を受けた農家の集団が抗議して高速道路を閉鎖した。
ウルズラ・フォン・デア・ライエン新欧州委員長は、農業は引き続き域内の中核を占めると発言している。
委員長はフランスのストラスブールにあるEU議会において、最近は減少しつつあるが、長らくEU予算の半分を占めてきた農業は「私たちの文化と未来の価値ある要素だ」と述べている。
若手の農家に手を差し伸べて収入を増やす取り組みを行うほか、国内農産品価格の下落につながるとヨーロッパの農家が懸念する不公平な国際競争には、反対していくと表明している。また、EUの貿易相手国が農産品を輸入する場合、「EUの環境基準に従わなくてはならない」としている。
By CLAIRE PARKER Associated Press
Translated by Conyac