韓国7-9月出生率0.88、過去最低に 南北統一でも人口減?
◆徴兵にも影響 若い男性が激減
韓国には徴兵制度があるが、人口減によりその軍事力に大きな影響が出るのではないかと言われている。現在約60万人いるとされる韓国軍だが、若い男性が減っており、2022年までには50万人に縮小するということだ。このままだと、基準を満たす被徴兵者は次の20年で半減してしまうのではないかと懸念されている。
韓国軍は想定される北朝鮮の攻撃に対する防御の最前線となるはずだが、北朝鮮軍は推定120万人とされており、兵士の減少は防衛に大きく影響する。韓国軍では、ドローン、衛星、無人戦闘機に加え、女性兵士を増やすなどして対応する計画だという。韓国政府は科学とテクノロジーで軍事力の構造を変えていくと発表している。
若い男性の減少は、軍の士気にも影響すると見られている。文在寅大統領は選挙公約を果たし、徴兵期間を昨年3ヶ月短縮した。また兵舎での携帯電話使用も4月から認められている。韓国軍のアドバイザー役である大学教授のLee Sang-ho氏は「軍は甘やかされている」と批判的だ。
韓国政府は防衛費を7%増額し、兵器技術の向上に努めているが、人にしかできない仕事もあり、部隊の縮小は金では補えないという見方もあるという。政府は人口減少を脅威と見ており、経済的インセンティブなど少子化対策に多額の費用をかけているが、その努力はいまだ報われないとWSJは述べている。
◆北朝鮮も人口減 南北統一ならどうなる?
人口減少はおもに先進国の問題であり、もし南北統一があれば、途上国である北朝鮮が出生率上昇に貢献してくれるという考え方もある。しかしこれを一蹴する見方を、フリーランス・ライター兼コンサルタントのアンソニー・フェンソム氏がナショナル・インタレスト誌で示している。
同氏によれば、北朝鮮の現在の人口は、韓国の約半分の2500万人と推定される。その政治体制のため資料はあまりないが、シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所の人口動態専門家、ニコラス・エバースタット氏によれば、すでに人口増加のピークは1960年代後半から1970年代前半に来ており、現在の出生率は1.9ほどと見られるという。他国のように移民で減少を補うことは考えにくく、子育てサポートの財政的資源もないことから、専門家の間では、北朝鮮の人口は2044年ごろから減少に転じると予測されている。
東西が統一されたドイツの場合は、旧東ドイツの出生率はいったん下がった後に改善したものの、結局人口置換水準以下となっている。統一で生活が豊かになっても子供は増えなったのだ。Korea Economic Institute of AmericaのTroy Stangarone氏は、朝鮮半島統一でもう少しうまくやれたとしても、北朝鮮の出生率の劇的な改善を期待できる兆候はほぼないとしている。韓国だけでなく朝鮮半島全体にとって人口減少から逃れる道はなさそうだ。
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