悪化の一途を辿る香港情勢 暴力の常態化、北京の余裕

Kin Cheung / AP Photo

 筆者が今年8月下旬に1週間ほど香港を訪問したときに比べ、情勢はきわめて悪化している。8月下旬に現地にいた際、週末にデモや衝突はあったものの、普通に滞在することにおいては大きな制限はなかった。いったい、香港はどこに向かおうとしているのだろうか。

◆暴力の最前線と化す学問の場
 香港理工大学では17日、構内に立てこもるデモ隊と警官隊が衝突し、警官隊が催涙弾で攻撃する一方、デモ隊が火炎瓶やレンガ、弓矢などで応戦する事態となった。この際、デモ隊が放った弓矢が足に刺さり警官1人が負傷した。また、同大学近くの香港島と九龍地区を結ぶ香港海底トンネル上の橋では警察車両に火がつけられるなどし、交通機関にも大きな影響が出た。香港警察は、実弾の使用もやむを得ないと警告している。

 また16日、香港に駐留する中国人民解放軍がTシャツと短パン姿で路上の壊れた建物のレンガや石を撤去する姿が確認された。香港政府の要請なく駐屯地の外で人民解放軍が活動するのはきわめて異例だ。

Text by 和田大樹