これからの地域社会を守るために「外国人青年地方活躍制度」構想を

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著:毛受敏浩(日本国際交流センター執行理事)

 出入国在留管理庁は10月25日、在留外国人数が283万人と過去最多となり、半年間で9万8千人が増加したと発表した。在留外国人は増え続けており、今後も年間20万人ペースで増えていくだろう。増加する外国人の大多数は青年層である。大学、専門学校、日本語学校への留学や、技能実習制度などで働きに来る人々は20代、30代の青年層である。今後10年を考えれば200万人の若者が増えることになる。かれらの力をどう生かすのかは、少子高齢化が進む日本にとって大きな課題といえる。

                                                                                                                 

◆見殺しにされる高齢者
 猛威を奮った台風19号。かつてない大型台風は想定を遥かに超えた水害を引き起こし、甚大な被害を広範囲に及ぼした。今回の台風で改めて浮き彫りになったのが高齢社会日本の脆弱さである。

 今回の被災者の年齢を見ると、10月16日の時点で年齢や年代が確認できた死者63人のうち、60歳以上が47人と75%を占めた。高齢者のなかでも、自力での避難が難しい「要支援者」に位置づけられる高齢者が多く亡くなった。避難情報の知らせを聞いても、寝たきりや車椅子の高齢者は容易には避難できず、また避難先も受け入れ体制がまったく整っていない。そうした状況のなかで、一人暮らし、老老介護の高齢者が犠牲者となった。

 実はこれとまったく同じ状況が昨年起こっている。2018年7月の西日本の豪雨では年齢や死亡した状況が明らかになっている141人について調べたところ、60歳以上が100人で7割を超えた。

 自然災害の深刻さの理由は気候変動による台風などの大型がその一つであるが、もう一つは人口変動の影響が考えられる。農村地帯では高齢化、人口減少により林業や農業の放棄地が増え、その結果、土壌の保水能力や排水能力が低下した。その結果、上流で発生した集中豪雨がそのまま濁流となって下流の町を飲み込み、人々の命や財産を奪う。

 日本は江戸時代から山林の植林と治水に精を出し、また農耕地の維持によって台風の被害を最小限に抑える知恵と経験を育んできた。しかし、近年の人口減少により、山や田畑は荒れ放題となり、林業や農業の衰退だけでなく、自然の猛威が高齢化し脆弱となった社会を直撃するようになった。今回の台風では高齢者施設から車椅子や寝たきりの老人が自衛隊に助け出される様子が報道されたが、若者が少ない地方で介護施設の職員だけでの救出はきわめて困難だろう。

◆技能実習制度の抜本的見直しを
 高齢者が半数近い地域社会が増えるなかで、高齢者同士が助け合う社会を目指すという政策そのものを根底から考え直す時期に来ているのではないか? 自然災害の多い日本の地域社会には若者の存在がそもそも不可欠なのではないか? 現状では高齢化は2060年代を超えて続くことが想定されており、今回のような高齢者が犠牲になる悲惨な状況は今後さらに増えていくだろう。

 筆者として提言したいのは地方都市に外国青年を積極的に受け入れる新たな制度の構築である。すでに一部の地域では外国人の活躍を推進する動きが始まっている。広島県の山間の町、安芸高田市では地域に住む外国人に対して消防団の担い手、さらには伝統文化の担い手となることを期待して事業を行っている。高齢化した農村社会ではそうしなければ社会の持続性が失われつつあるのが現実ではないか。

 少子化によって日本人の青少年は減り続ける一方、その大半が若者である在留外国人の数は年間15万人以上増えている。とりわけ近年、増加が著しい在留資格に技能実習生がある。現在、技能実習生の数は32万人を数えるが、その大半は20代の若者である。四国4県では外国人の在留資格のトップを占めてように、高齢化とあいまってその増加は著しい。

 現実には彼らは、技能習得という美名の下で、最低賃金で働く出稼ぎ労働者であり、彼らに消防団員になるなど、地域社会への貢献を期待するのは筋違いというものだろう。しかし、彼らのなかには日本語を覚えて、日本社会に溶け込み、地域に貢献したいと考えている若者もいる。

 そこで提案したいのは、従来の技能実習生を改変し、地域社会への貢献を目的とする「外国人青年地方活躍制度」を創設することである。昨年末、ブルーカラーの分野で就労を目的とする在留資格「特定技能」が創設されたが、そうであれば、技能実習制度も抜本的な見直しをすべき時期といえる。

 たとえば、地場産業で働く彼らが、地域社会の消防団の団員としても1年間活躍すれば1ポイント、班長になれば3ポイントなど、地域社会の貢献をポイントで換算し、ポイントを重ねた実習生には定住の道を開く新たな制度を作るのである。定住を認める際には、地域社会貢献のポイントとあわせて、日本語の能力と安定した職業があることなども条件とする必要があるが、そうした制度ができれば、彼らの多くは日本語や地域の文化を学び、地域社会に貢献しようと努力するだろう。

◆「ラグビー日本代表」が提示する新たなビジョン
 突飛に思えるかもしれないが、カナダやオーストラリアでは、国の移民政策とは別に州政府がそれぞれの州のニーズに合わせて移民を受け入れる制度が存在する。日本も、高齢化、人口減少が著しい各県では、地域の高齢者の命を守るためにも、一時しのぎの低賃金労働者ではなく、定住し活躍する外国人青年を積極的に受け入れていく必要がある。
 
 今後も、人口減少が進み、国土の荒廃が想定される以上、世界の若者が日本の地方を新たなフロンティアとしてとらえ、日本人とともに発展させる第二のフロンティアビジョンが必要ではないか。多国籍、多民族の集団でありながら、そのチームワークが群を抜いていたラグビー日本代表の活躍はその可能性を示唆しているようにも思える。その例にならえば、目指すべきは人口減少による停滞感を吹き飛ばす外国人青年と日本人住民がタッグを組んで地域の発展を目指すことだろう。

 日本は2020年代以降、人口減少の急加速期に突入する。2020年代にはその減少幅は550万人と四国の人口の1.4倍の減少を政府機関は想定しており、その間、高齢化はさらに続いていく。国を開く思い切った未来ビジョンなしには、人口減少と高齢化が深刻化する日本に愛想をつかした日本人の若者すら、近い将来、海外へ去っていくのではないだろうか。

Text by 毛受敏浩