16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんを嫌う大人たち 人格攻撃も

Eduardo Munoz Alvarez / AP Photo

◆陰湿なバッシング 大人げない大人たち
 実はグレタさんは自分がアスペルガー症候群と公表しており、以前から大人による彼女への人格攻撃のような発言がしばしばあった(エネルギーと環境に関するメディア『E&Eニュース』)。彼女を気に入らない人々は、彼女の自閉症に言及。「モノトーンな声」だと指摘し、「世紀末的恐怖のまなざし」を持った「ミレニアル世代の変わり者」と呼んでいたという。

 アイリッシュ・タイムズ紙のコラムニスト、ジェニファー・オコネル氏によれば、ツイッター上でのグレタさんへの批判にも驚くべきものがあったとしている。たとえばオーストラリアの保守派の温暖化否定論者アンドリュー・ボルト氏などは、「非常に精神不安定」「異様なほど影響力がある」とコメントしている。意図的に自閉症と関連づける、最も悪意があり、最も愚鈍ないじめがネット上で行われているとオコネル氏は指摘している。

 専門家は、このような人格攻撃は、知的障害、発達障害がある人に公の場での発言を思いとどまらせるという深刻な二次的被害につながるとする。大人の「操り人形」だから、という遠回しな表現をグレタさんに使う人もいるが、それは明らかに、彼女の考え方は変わっているのでその発言を無視するべき、というシグナルを特定の集団に送ることになる。自閉症や脳の多様性に関する著書を持つスティーブ・シルバーマン氏は、これは典型的な自閉症バッシングだと述べている(E&Eニュース)。

◆グレタ批判は解決にならず
 グレタさんが、今回の会議出席のため、二酸化炭素排出量の多い飛行機を使わず、ヨットでやってきたことに関しても批判がある。米ロングアイランドの新聞ニューズデイのコラムニスト、キャシー・ヤング氏は、数人がこのヨットを持ち帰るために飛行機で戻る予定であることを指摘し、今回のグレタさんの旅は、彼女自身のまばゆい環境ブランドが持つエリート意識と、実用より象徴を好むことを典型的に表したと述べる。グレタさんの活動は疑似宗教的で、パニックを煽るものだとも述べ、今後の科学の発展に期待し、あまりに悲観的になる必要もないだろうと述べている。

 一方、前出のオコネル氏は、グレタさんのヨットでの旅は抗議行動の一つで、他人に同じことを強要するものではないとする。だからこそ、象徴的であり挑発的であってよいのだとしている。

 グレタさんが多くの人々の怒りを買うのは、気候変動が恐ろしいものだとわかっているからだと同氏は指摘し、否定は真実に向き合うよりずっと簡単だと述べている。グレタさんを批判する大人は多いが、本当の変人は、力強い世界的ムーブメントを自力で始めた活動家ではなく、安全なコンピュータのスクリーン越しに、アスペルガー症候群の子供をあざ笑う中年男性のほうではないかとしている。

 若さと決意と変化を意味するグレタさんを彼らは怖がっているのだと同氏は述べ、科学を見方につけた彼女にアイデアのない大人は勝てず、彼らがどんなにツイッターやブログで熱弁をふるっても、より大きな問題に取り組む彼女がそれに反応することはないとする。グレタさんは理想主義者であり若さゆえの行動も取るが、彼女のような意見は必要だとし、より穏健な不同意の声は否定することなく、彼女の主張に耳を傾けたいとしている。

Text by 山川 真智子