9月16日、香港の主要な病院の一つに数百人もの医療スタッフが集結した。香港で週末に新たな暴動が発生したのを受け、民主化を求め警察の武力行使を非難する抗議運動を支援するためだ。

　プリンス・オブ・ウェールズ病院のスタッフたちの多くは黒色の手術用マスクを着け、抗議の歌を合唱してスローガンを唱えた。人間の輪を作ると、香港特別行政区行政長官の公選や警察による説明など抗議者の要求を受け入れて紛争を解決するよう政府に求めた。

「再び平和になってほしい。警察は無差別な逮捕や過剰な武力行使を止めてほしい」と看護師の陳さんは話す。

　病院スタッフはこれまでも抗議行動の支援のために集まっていた。だが、13日付の新聞2紙の投書に名前のあった約500人の医師は、警察による危機管理を支持した上で、暴力を美化してはいけないと語っている。

　香港中心部で15日に民主化を求める運動が暴動に発展した後、人々が病院に集結した。

　子連れの家族とともに、数千人もの黒いマスクをまとった抗議者が警察の阻止を振り切り、ショッピング街の銅鑼湾からビジネスの中心地に向かう2キロの距離を穏やかに練り歩いた。警察からはデモ行進の許可を得られなかったものの、この夏にしていたような行進を続けた。

　一部の抗議者は中国の国旗に火をつけ、地下鉄の駅を破壊した。数百人もの抗議者は公共の建物に狙いを定め、警察の防御をかいくぐってレンガやガソリン爆弾を投げつけた。警察は催涙ガスを一斉に浴びせかけ、唐辛子スプレーのほか、後で容疑者を特定できるよう青く着色した液体をまき散らす放水車を使って応戦した。抗議者は引き下がったが、再び集合して数時間ほどいたちごっこが続いた後、ようやく落ち着いた。

　中国政権の支持者たちが15日遅くに北角とフォートレスヒルにやって来ると、両者の言い争いが始まった。警察は16日、一部の人がハンマーなどの武器を用いて襲撃したために多くの人が負傷し、警察も催涙ガスを撒かざるを得なかったと話している。

　香港警察高官の謝振中（シャ・シンチュウ）氏は、15日の暴動で80発以上のガソリン爆弾を投げつけるなど「過激な抗議者による暴力行為がエスカレートした」ため、放水車に火の手が回ったとしている。抗議者同士の非難合戦もあったという。

　抗議者が2人の警官めがけてガソリン爆弾を強く投げつけることもあったため、警察は威嚇射撃を余儀なくされたと主張している。謝氏によると、暴動により政権寄りの支持者が暴力を振るわれ、ある男性は意識不明になるまで殴打された。

　警察は13日以降、89人を拘束し、これで6月に始まった抗議運動で逮捕されたのは1,453人となった。警察は取り締まりを強化しており、これ以上暴力が続くと「全員が敗北者となる」と話している。

　病院関係機関によると、15日に28人が入院した。

　政府は違法行為を厳しく非難している。15日に出された声明のなかで、暴力行為はコミュニティに悪影響を及ぼすだけで、政府は対話を通して真摯に問題解決を目指していると繰り返した。

　香港の自治が中国本土の規則によって介入を受ける事例の一つと住民がみなした逃亡犯条例の改正によって火がついた反政府抗議活動では、暴力行為と警察との衝突がますます拡大している。

　政府が今月になって同条例を取り下げる決定をしたものの、抗議者は決定が不十分で遅きに失したとみている。要求はさらに広がっている。また、平和的に行う示威行動では変化が起きなかったとして、最前線にいる抗議者のなかには、暴力を容認する者もいる。

　ジュネーブでは、香港の代議士である陳淑莊（タンヤ・チャン）氏が国連人権理事会に対し、抗議者に残虐な行為を働いたとみられる警官を調査するよう要請した。陳氏によると、抗議者のことをゴキブリ呼ばわりした警官の行為は「言論の自由を封じるための害虫駆除」だった。

　香港経済は米中貿易戦争の煽りでもともと不安定になっていたところ、今回の暴動でさらに悪影響を及ぼしている。暴動を煽っていると外国勢力を非難している中国にとっても厄介な状況である。

　抗議者たちは、中国の建国70周年にあたる10月1日まで、活動を続けると公言している。15日の運動が許可されなかった抗議集団「民間人權陣線」では、9月28日と10月1日にも集会を予定している。この集団が以前に組織化した複数の集会では、多くの参加者が集まった。

　同集団で調整役を務める黎恩灝（エリック・ライ）氏によると、警察は平和的な抗議者の意見を封じるために集会を禁止してきたが、さらに怒りを買っただけだとしている。

「我々の要求に応えてくれない限り、対話しても無駄だ」と黎氏は言う。

By EILEEN NG Associated Press
Translated by Conyac