なぜ中国人は香港デモを批判するのか?「一つのストーリー」だけの報道と教育

Darryl Dyck / The Canadian Press via AP, File

 香港のデモについては連日世界のメディアが状況を報じ、香港政府、中国政府への国際社会からの批判が高まっている。ほとんど報道がなかった初期とは違い、現在では本土の中国でもデモのニュースが報じられているが、中国人の間ではデモ隊への批判と中国政府への支持が圧倒的だ。その理由として、中国の報道、検閲、教育の問題が上げられている。

◆「デモは暴力」メディアの報道が世論を形成
 ドイチェ・ヴェレ(DW)は、上海での香港のデモ隊への支持はほとんどないと伝える。人口2300万人の上海で取材した独公共放送連盟ARDのインタビューにひとりの市民は「きちんと仕事をして、平和な毎日を過ごせないのか」「抗議運動自体が無意味だ」と答えたという。まさにこれが大方の中国人の見方だろうとDWは述べている。

 海外メディアと仕事をすることが多い上海在住ジャーナリストのJose Qian氏は、9割の中国人は香港デモに批判的だと推測している。同氏は、上海市民は何かが香港で起きていることは知っているが、何が理由でデモが行われているのか、どんな経過をたどったのか、何が目的なのかといった詳細を知る人はあまりいないだろうと見ている。情報源がほとんど中国国営メディアしかないからだ。中国国内には、デモに対しては一つのストーリーしかなく、そこにはデモの背景などはない。あるのは暴力的で、過激で、人や物を傷つけるデモ参加者の姿であり、テロと同等に語られている。結果的に、国民は中国政府と香港政府の支持に回ることになるとしている(DW)。

Text by 山川 真智子