安全な国、日本で衝撃的な児童襲撃 手薄な安全対策 川崎殺傷事件
世界で最も安全な国の一つであると考えられている日本で、刃物を使った大量殺傷事件が発生した。東京近郊の川崎市多摩区で発生した集団登校中の小学生女児を狙った殺傷事件は、日本中の保護者や教育関係者に衝撃を与え、子供たちの安全に関する懸念が湧き上がっている。
5月28日朝、一人の男が突然、両手に持った包丁を振り回しながら、川崎市多摩区の登戸駅に近いスクールバスの停留所にいた女子児童たち、および少なくとも2人の保護者に次々と襲いかかった。この事件で、11歳の女児と39歳の男性が死亡し、その直後に犯人も自ら頸部を刺し、搬送先の病院へ搬送されたがその後、死亡が確認された。この事件で少なくとも17人が刃物で切り傷を負い、その大半はカトリック系の私立学校であるカリタス学園に通う小学生である。
日本の子供たちの多くは、一人、もしくは数人のグループで近所の学校へ徒歩で通っている。なかには、バスや電車を利用し一人で通学している児童もいる。近隣に住む年配者やボランティアの人々が、頻繁に交差点で子供たちの横断を手助けしたり、安全を見守ったりしているが、その他の安全確保については現状、手薄であると言わざるを得ない。
NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の理事長、宮田美恵子氏は、日本では犯罪発生率がとても低いため、日本人の多くは、安全性に対して楽観的に構え過ぎていると語る。宮田氏は、安全管理の当局者はしばしば、犯罪の防止よりも災害への対応に焦点を合わせがちであると言う。さらに、小学校に通う児童たちは、揃いの制服を着たり、バス停の周りに大勢集まったりすることが多いため、とりわけ襲撃の対象にされやすいと宮田氏は語る。
「教師は防犯の専門家ではない。近隣に住む人々の監視の目と協力に加え、制服を着用したプロの警備員を配備するなど具体的な防犯対策を施すべきだ」と宮田氏は言う。
2016年に文部科学省がまとめた統計によると、66%の学校が近隣住民のボランティアのみによる安全パトロールを実施している。しかし、警備員を雇って安全対策に乗り出している学校は10%に満たないという。
安倍首相は5月29日、警察庁と教育関係機関に対し、全国の学童を保護するための登下校時の安全対策とパトロールの強化を指示した。また、学校や当局者に対し、不審者に関する情報の共有をさらに進めるよう促す一方で、地域のボランティアグループによる安全監視活動のさらなる活性化を求めた。
「子供たちの安全を守るために、できる限りのことをすべて実施しなければならない。私は、多くの幼い児童を襲った大変痛ましい襲撃事件に対し、強い憤りを覚える」と安倍首相は述べている。
日本政府は過去に学童の通学時の防犯マニュアルを発行している。菅官房長官によると、子供たちが徒歩やバスで集団登校する前に集合できる安全な場所を確保できるよう、関係閣僚が検討を始めているという。
この襲撃事件後、教師による監視を強化した学校もある。日本の中部地方に位置する長野県佐久市では、子供たちがスクールバスを使って通学する途中に不審な人物を発見した場合、すぐに助けを呼ぶか防犯アラームを使うように警察が指示を出した。
カリタス学園の子供たちは、電車の駅から近くのバス停へ歩いていき、教師が付き添い見守る中、学園が運行するバスに乗って学校へ向かう。
同学園に子供を通わせている保護者の一人は、「バスの運転手をはじめとして、学校は、在校生の子供たちの安全について十分に配慮していた。一体どうすれば、大人が子供たちを完璧に守ることができるのだろうか?」と匿名を条件に語る。
5月29日、神奈川県警は川崎市麻生区に住んでいた51歳の岩崎隆一容疑者の自宅へ向かい、家宅捜索を実施した。警察は詳細を明らかにはしなかったが、地元の報道関係者によると捜査員は襲撃の犯行の動機となる手がかりを探していたと話す。
川崎市の当局者によると、岩崎容疑者は老齢の伯父と伯母と同居し、他人との接触を絶っていた模様だという。
日本では、銃撃に巻き込まれて死者が出る事件は稀にしか起きない一方で、近年は耳目を集める殺人事件が頻発している。2016年には、元職員が神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設へ刃物を持って侵入し、19人を刺殺して20人以上に重軽傷を負わせたとされている。2001年には、大阪府池田市の小学校へ男が侵入、8人の学童を殺害し、教師を含む15人を負傷させる事件が発生している。
By MARI YAMAGUCHI Associated Press
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