ローマ字「姓・名」なら西洋人も注意! 20年ぶりの挑戦、海外の見方は?
◆浸透しなかった「姓-名」順 政府は再挑戦
しかし国語審議会の答申から今まで、「姓-名」順の英語表記は実際には定着しなかった。ワシントン・ポスト紙(WP)は、政府出資の財団の英語出版物や、学術論文などでは「姓-名」順がしばしば使われていると述べるが、ウェブ誌『クオーツ』が指摘するように、日本人は若いころから英語や外国語で書くときには名字は後にするよう教えられている。また、柴山大臣自らも、自分の名刺もローマ字は「名-姓」になっていると述べており、ルールとしての一貫性はなかった。
河野外務大臣は、「令和」という新時代を迎えたことや、東京五輪の開催が迫っていることなどから、国内の英字メディアのみならず、各国の主要報道機関にも、日本人氏名の「姓-名」順の英語表記を要請したいと表明している。さらに、中国の習近平主席がXi Jinping(シー・チーピン)、韓国の文大統領がMoon Jae-in(ムン・ジェイン)と海外で表記されているため、安倍首相もAbe Shinzoと表記されるのが望ましいとメディアに話した。しかしWPは、河野大臣の要請にアメリカ政府が応じるかは定かではないとしている。また、「姓-名」順には日本政府内でも異論があり、国民の声を聞いてから決めるべきという意見があることを報じている。
◆実はどっちもあり? 海外メディアに厳格なルールなし
クオーツは、中国や韓国の名前の英語表記が必ずしも「姓-名」順とは限らないと指摘している。欧米メディアでは、通常その人が西洋式を選んだ場合、中国、韓国系の氏名は「名-姓」順で表記されるという。たとえばグーグルの元中国支社長、カイフー・リー氏は、欧米メディアでLee Kai-fuと表記されることはほぼない。また、サムスンの副会長、イ・ジェヨン(Lee Jae-yong)氏の場合は、Jay Y. Leeとされる場合もあるそうだ。
APは、もし日本人氏名の英語表記が「姓-名」順で定着した場合、ファーストネームで呼び合う習慣のある西洋人は、名刺を見て、うっかり名字のほうを名前と勘違いしないよう気を付けなければならないとしている。確かに名字を呼び捨てにされた日本人が、親しみを込めてファーストネームを呼んだつもりの外国人に対し、失礼な人という印象を持つこともありそうだ。
「名字が先」の周知には時間がかかる。国内でさえ20年立っても浸透しなかっただけに、今回世界的に定着するかどうかは、政府の頑張り次第と言えそうだ。
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