シンガポールは、都市か、国か?

Singapore. License: CC0 Public Domain

著:Mong Palatino シンガポールは、都市か、それとも国か?シンガポールが独立国家として世界的に認識された今、この質問は、ばかげていると思うかもしれない。しかし、シンガポールの法務大臣であるK・シャンムガム氏にとっては、シンガポールは都市として扱われるべきであるのだ。この意見は、インターネット上で議論を引き起こした。

 ニューヨーク州弁護士会国際セクション(New York State Bar Association International Section)の会議における講義の中で、シャンムガム氏は、シンガポールを他の国々と比較するからシンガポールの政治は一党支配型だという批判的な世論が大勢を占めようになるのだ、と述べている。彼は、シンガポールを都市と見なすべきだと、主張している。

「…ニューヨークでは、民主主義かどうかは誰も疑問に思わない…これは多くの人が間違えるところである。私は、シンガポールは違うのだと説明しようとした。シンガポールは国ではなく、都市だ。」

 カヴァリエリオは、シンガポールの独裁主義ルールを正当化するための「ねじり論理」の法務大臣を責めた。

そして今、宝石のような国を作ろうと骨身を惜しまず努力してきたのに、結局、シンガポールは国ではないと伝えられた。それは野卑に聞こえたし、責任転嫁のようにも聞こえた。また、職務怠慢のようだ。

シンガポールよ、国でないのであれば、一体何なのだ?

シャンムガム氏の動機は、そこまで高尚なものではない。彼はシンガポールの政治システムは、「普通の国」の基準で評価すべきでない、普通の国の基準で見れば、シンガポールの政治システムはきっと非民主的に見えるだろう、普通の国と比較するのではなく、シカゴ、サンフランシスコ、ニューヨークのような「都市」と比較すべきであると、主張した。そして、これらの都市は、従来から一党支配を認めてきたし、民主的な都市であると言っている。

私たちが問題の核心に到達する時、私たちは度々、それがまた新味のない話であることに気づく。つまりそれは、支配者の都合の良いように理論を捻じ曲げて民主主義を装った、独裁主義的支配者のご都合主義的な昔からある陳腐な話なのである。

結局は、シャンムガム氏が先週アメリカ人のゲストにもたらしたシンガポールのプレス、司法制度、政治システムについての答えは、本当の答えでなかったのだ。きちっと答えてもらいたい質問に対しては、合理的な答えのように見えるが答えになっていない答弁を隠れ蓑にして、はぐらかされてしまった。

 レイチェル・ゼン氏は、このような考え方を理解できなかったため、シャンムガム氏に要点を詳細に述べるよう求めた

個人的に、話をそのまま受け入れるのは少々難しいと考える。シンガポールが国ではなく都市だとしたら、私たちの都市はどの国に所属するのだろうか…。

私は納得していない。私たちの敬愛するK・シャンムガム氏は、シンガポール市の統治の役割を担うために、高い給料をもらっているのだ。だから、彼が誠意をもって私たちを啓蒙してくれるのならば、私は心から彼に感謝したい。

 このブログ投稿を論評して、アノン氏は、シャンムガム氏の主張である「シンガポールは、国ではなく都市だ」という文脈を正しく理解するためには、評論家はまず彼の講演の全台本を読むべきであると表明した

台本を読んでみたまえ。シャンムガム氏は、シンガポールについて「国」ではなく「都市」であると論評した。そのとき、シンガポールには自由で公平な選挙制度があるにも関わらず、なぜシンガポールの選挙はひどく歪められているのか、その理由を説明していた。彼はシンガポールとアメリカの都市を比べ、いくつのアメリカ都市が数十年に渡って一党支配選挙を行ってきたかを比較した。

彼がシンガポールは「国ではない」と言ってはいるものの、本当に言葉通りに考えているわけではないのだ!

 クレメント・タン氏は、新世代のリーダーであるシャンムガム氏が、このような物議を醸し出す主張をあえてしようとしたことに失望した。

私は、シンガポールの法務大臣が述べたことにとても困惑している・・・少なくともリー・クアンユー氏と守旧派が政権をとっていた時代には、彼らの政策に賛同するかどうかはさておき、彼らに何を期待したらよいのかは分かっていた。しかし、シンガポールの政治指導者の中の新世代の一員であるK・シャンムガム氏については、自分が主張していることを本当に信じ理解しているのか、そして何に関連付けているのか、私にはさっぱりよく分からない。

 テマセク・レビュー(訳注:シンガポールの政府が所有する投資会社テマセク・ホールディングの年次報告書)はシャンムガム氏の主張の抜け穴を分析する。

シャンムガム氏は「うっかりミス」すなわち、フロイト的失言をしたのだろうか?シンガポールが国ではないならば、私たちはまだ主権のある独立国家として考えられているだろうか?それでは、どの国がシンガポールの都市の主権を持つのだろう?

シンガポールは、国であり、同時に都市であるという意味では、ユニークである。

シンガポール閣僚内の重要な大臣として、シャンムガム氏の言葉は強い影響力を持つ。

国家でなく都市を防衛するだけなのに、シンガポールの男性はなぜ兵役に服しているのか。シンガポールの首相は誰に対して報告義務を負うのか。ピンクのICカード(訳注:シンガポール公民が持つ身分証明書)を持つことにどんな価値があるのだろうか。私たちは国民なのか、それとも都市の住民なのだろうか。

 シンガポールは常に都市である。Journey of a Decadeは、そう確信している。

私の言うことをよく聞いてほしい・・・上記の文は多くのシンガポール人を怒らせたように見える・・・事柄を整理してみよう・・・誰もシンガポールに関しては、国だとは言っていない。シンガポールは以前からずっと都市だったのだ。

シンガポールは、以前からずっと島の都市国家だった。国防を特に取り上げて議論しているのをしばしば耳するので、議論しているとは知っている・・・しかし、その議論は全く間違っている。都市の防衛について議論されるべきなのだ。


This article was originally published on Global Voices(日本語). Read the original article.
Translated by Asuka Shiragami.
Proofreading:Masaro Kaneko

Text by Global Voices