チリ:ジェンダー・アイデンティティ法への長く曲がりくねった道

「恐れることなかれ」写真:torbakhopperのフリッカーより。使用許可済 (CC BY-ND 2.0)

 著:Jaime Vidal Melero ポール・マッカートニーのザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(長く曲がりくねった道)は、ただのバラード曲ではない。この法律は当初、チリのトランスジェンダーが、自身のジェンダー・アイデンティティに従って包み隠す事なく生活できるように、差別の撤廃と制限の緩和を意図するものであった。しかし、法案は議会で散々いじくり回され、実際に彼らの権利が卑下される可能性があった。

 論争を招いたこの法案への道のりは、4年前、チリ上院で初めて導入された2013年5月に始まった。その法案は「LIG」として知られ、原案は困った状況に陥る可能性がある。

 2017年5月10日、議会委員会は、逐条的に投票を行うため、上院に議案を提出した。


ついに!
ジェンダー・アイデンティティ法案が上院に提出されたよ。
#LIGnow

 チリにおける性とジェンダーの多様性に関する戦いで、法が成立したことは極めて決定的な瞬間となるだろう。LGBTQ市民社会団体は、議員たちからの同意を取り付け、当初の計画より損なわれた点を改善するために今後、出来る限りの努力をしなければならないだろう。とりわけ、第三者の異議が認められるという条項について、OTD副会長フランコ・フイカ氏は、以下のように述べた。

「第三者による異議が認められるということ、これはこの法律における重大な問題点の一つである。このような事が許される状況はひどく嘆かわしい。上院または国会で、未成年者や青少年もこの決議の対象にしてくれると望んでいた。しかし私たちはまるで、この件を考慮しない上院に対し見て見ぬふりをしてるようでならない。

いくつかの法廷バトルに勝利

 政治家らがこの法を巡り何度も論争を重ねたにも関わらず、チリの国民は公共の場や市民レベルでジェンダー・ダイバーシティに関する数々の成長を見てきた。

 2017年4月11日、コンセプシオン市の裁判において、アレックス・ティマ氏のジェンダー・アイデンティティが尊重され、氏名・性別の変更が命じられた。ティマ氏は、2016年10月より、Movilh Foundation(同性愛者統合と解放運動)の法的支援を受け、出生証明書の内容変更のための手続きを始めていた。アレックス・ティマ氏は、自身のジェンダー・アイデンティティが州発行の身分証の内容と一致していない事が原因で日常的な嫌がらせを受けていたと、エル・シウダダノ新聞社に語った。

「ジムに行っても、更衣室は男性用も女性用も使えませんでした。施設を利用出来なかったのです。[中略]これからは、『あなたトランスジェンダーなの?』なんて嫌な質問をされず、ゼロから自分の勉強を始められます。」

 トランスジェンダーの権利を巡る法廷論争は特に、公共の場と教育現場において厳しいものだった。例えば、チリの教育長は最近、トランスジェンダーの若者と子供たちの教育に対する権利を守り、差別をなくすため、ジェンダー・ダイバーシティ団体の参加者と共に作成した回覧板を発表した。イークアル・ファウンデーションの事務局長エミリオ・マルドナド氏はこの文書を支持、称賛すると述べた

「これはトランスジェンダーの子どもたちや青少年を守るための、画期的な出来事なのです。特に、彼らは他の集団に比べて学校を辞めてしまう確率が高いため、これによって良い方向への第一歩となると確信しています。」

この@TodoMejora(全て良くなる)は願います。
今日上院に提出された法律(LIG)が、チリの子どもたちと青少年たちのアイデンティティを受け入れてくれますように。

 教育現場で回覧板のような方法が功を奏し、市民社会団体が擁護したことが結果につながった。これらはセレナのような人々にとって朗報であり、あるトランスジェンダーの少女は、自分の生い立ちを語り大きな話題となった。

「私たちには学校がなかった。一つ例え話をすると、一番の成績を取っても、私の見た目の問題で学校に入れてもらえなかった。ここでは私は女子トイレも使えるし、受け入れられている感じがするの。

私はトランスジェンダーの女の子。だけど幸せよ」


This article was originally published on Global Voices(日本語). Read the original article.
Translated by Kitty Garden(en),Etsumi Itai,Naoko Mori.

Text by Global Voices