ミレニアルズの「縛られない」生き方は、住まい・家族にも?
著:大倉奈津子 フリーランスや起業家、プロジェクト単位での雇用契約など、「会社に縛られない働き方」が注目を集めている。その働き方を牽引しているのは、今後の労働市場の主役であるミレニアルズだ(米国で言うところの「ミレニアルズ」は日本のゆとり、さとり世代で、1980年〜2000年初頭生まれ〈定義によっては1996年頃まで〉)。
2017年のミレニアルズに関する調査では、世界的には帰属意識が上昇傾向にあるとの結果が出たが、帰属意識が高いのも、企業の柔軟な雇用形態によるところが大きく、自分の能力・適正により関心があるのは変わらないようだ。
「デジタルネイティブ」で、自分の価値観を重視し、働く目的は「楽しい生活をしたい」、ワークライフバランスを保ちながら、好きなことをして稼いでいる。そんな彼らの特徴や価値観は、仕事だけでなく、住環境や家族のあり方にも親世代とは違った傾向を見せている(参考:日本生産性本部「働くことの意識」調査結果)。
◆数年後、自分はどこに?
ミレニアルズとその親世代を対象に「住まいと暮らし」の価値観について聞いたジャパンネット銀行の調査では、ミレニアルズは住まいを「モノ」ではなく、「コト」として楽しんでいるとレポートしている。
実に7割強のミレニアルズが数年後に自分がどこに住んでいるかわからないと答えているが、これは決して、「転勤」などを想定した答えではないだろう。事実、同調査の中で「アドレスホッピング」(固定の家に住まうことなく様々な場所に住む暮らし方)に興味があると答えたのは3割を超えていた。親との価値観の違いの中でも「地縁にこだわらず好きな場所で暮らしたい」、「拠点を決めず身軽でいたい」など、家に“縛られる”ことを好まない傾向が見て取れる。
◆住まいは“箱”ではなく“場”
そもそも家や車などの所有欲がないと言われるミレニアルズだが、家そのものに求めるものも、単に「寝食を行う箱」ではなく、「自分らしさの表現」、「やすらぎの場」であることを望んでいるようだ。1ヶ所に留まることを是としない割には、経済的理由や嗜好の問題で夜遊びをしなくなり、夜や週末を含めて家で過ごす時間が長いことも、家が自分にとって「心地いい場」であることの重要性が高まっているのではないだろうか(参考:VICE 〈老人化〉する若者たち)。そのため、自分のライフスタイルが変わった際に、場所にかかわらず住まいを変えるのは自然な流れなのかもしれない。
また、賃貸であってもカスタマイズやリノベーションが可能なマンションが人気だったり、物件の個性や周辺に住む人々をクローズアップしたサイトが人気だったりすることも、住まいに求めることが変化してきた表れなのだろう。
◆結婚はしない、しても一緒に暮らさない
ジャパンネット銀行の同調査にてパートナー(配偶者)との同居のタイミングについて聞いた項目で、「結婚前後問わず同居はしない、またはパートナーはいらない」と答えたミレニアルズが3割にものぼった。結婚はしたいけれど、経済的な理由で諦めている人もこの3割に入っているかもしれないが、欲しいけどできないと、パートナーがいらないは違う。
「Generation What?」の日本版「なにジェネ?」の調査では、将来像について「結婚して子どもがいる」が18歳〜34歳で68%だが、「結婚した方がいい?」との問いには、44%が「しなくてもいい」と答えている。何がなんでも“結婚”との考えは薄れてきているようだ。
一方、シェアハウスなどの需要が伸びていることを思えば、「誰かと暮らす」こと自体が嫌というわけでもない。誰にも頼らずに生きていくことは難しいし、他人との関わりあいも求めたいが、特定のパートナーは欲しくないということなのだろうか。
◆人生一度きり、今を楽しむ
アメリカではミレニアルズを表すのに「アボカドトースト」を例にすることがある。家なんかは買わないけど、1つ10ドル、20ドルもするアボカドトーストは食べる。つまり日々の生活の中での贅沢はするけれど、未来へ向けての貯蓄や大きな買い物はしない。
成人した直後にリーマンショックを目の当たりにしたミレニアルズ。先行きの不安は、親世代の比ではない。そんな彼らが「人生は一度きり、毎日の生活が楽しいことが一番」と考えるのも頷ける。
事実、一時期「#YOLO(You only live once)」をつけた投稿が爆発的に増えた。確かにInstagramへの投稿など「今、この場の楽しい瞬間」をシェアしたがるのは、そこに価値を置いている現れともいえるだろう。
“今を楽しむ”には“縛られる”要素は不要なのかもしれない。
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著者:大倉奈津子
フリーライター&エディター。大学卒業後、リクルート入社。営業、商品企画、音楽誌編集などを経て渡英。言語学の修士を取得後、日本語教師に。帰国後、ビジネス雑誌・ウェブ、ワーママ向けメディアなどを立ち上げ編集長を務める。4歳の息子を育てるワーママ。