「遺体の写真載せるな」欧米のナイロビテロ報道に、現地が強く反発した理由
◆NYT紙の報道および批判に対する対応
問題となったのは、事件当日の15日付で公開されたNYT紙の記事で、「ナイロビのホテル・オフィスの複合施設での犠牲者を出した襲撃事件、アル・シャバブが声明(Shabab Claim Responsibility for Deadly Assault on Nairobi Hotel-Office Complex)」というタイトルで掲載された。NYT紙のほかに、イギリスやドイツのメディアでも同様に遺体の写真が掲載されていたようだ。
NYT紙の記事を書いたのは、同社の次期東アフリカ局長Kimiko de Freytas-Tamura氏だ。当初、彼女に対してツイッター上での批判が集中したが、本人は写真を選んでおらず担当者に反論を向けるようにとツイッター上で説明した。
事件当日のうちにchange.orgにてナイロビで署名活動がスタートした。宛先はニューヨークタイムズおよび米国の人権団体Human Rights Campaignと国連だ。署名活動の内容は、犠牲者の残酷な写真を掲載することに対する非倫理性および、欧米でのテロ報道ではありえないような報道をケニアのテロに対して行ったことに対する公平性やメディア倫理を問い、写真の取り下げを要求したものだ。25日現在も活動が続いているが、2万5千の目標に対して現在約2万3千人が署名している。
記事公開から2日後、NYT紙からの公式見解が出され、なぜナイロビ襲撃後に残忍な遺体の写真を公開したかについて、責任者からの説明がなされた。概要としては、NYT紙は写真の選定は容易な決断ではなく、慎重に行っているという基本姿勢を示した上で、「犠牲者の家族や被害者に対しての配慮がない」という批判や、「欧米のテロ事件の報道でも同様の報道をするのか」といった公平性に対する疑問があがっている事実について触れた。また、今後の対策としてより明確なガイドラインを設定するとのこと。署名活動に関しての言及はなかった。
NYT紙写真責任者のMeaghan Looramは、以下のようにコメントした。「世界で起こっている事実を読者(70%がアメリカ人)に知らせ、理解を促すというジャーナリストとしての責任と、犠牲者とその家族に対する配慮のバランスを取らなければならない」
◆NYT紙報道への他メディアの反応
本件に関して、Quartz Africaは「欧米メディアのナイロビのテロ襲撃事件の遺体写真は、被害者の名誉毀損であり、ジャーナリズムの失態だ」というタイトルで記事を公開。遺体の写真を公開することでのみ、テロによる死者の報道に現実味を持たせることができるというNYT紙の議論には同意できないという見解を示した。さらに、とくにアフリカにおける「遠く離れた他人の死」という欧米メディアの報道のあり方自体も、非常に根深い問題だと指摘した。欧米で起こったテロの報道と、アフリカなどで起こったテロの報道におけるダブルスタンダードに対して疑問を呈した。
BBCは、自社を含めたメディアは、公開する画像に関しての厳しいガイドラインを設けており、人命や遺体に関わるものに関しては、とくに留意しているという見解を示した一方、現実を伝えるためには、残忍な写真を公開する必要性もあるとした。
現地メディアはツイッター上での批判が巻き起こっている事実を簡潔に伝えるにとどまった。Daily Nationは、ツイッター上での批判に対してのDe Freytas-Tamura氏の反応を伝えた。Nairobi Newsは、署名活動の事実を伝えた上で、東アフリカ外国人記者クラブ(The Foreign Correspondents Association of East Africa (FCAEA))が、De Freytas-Tamura氏がツイッター上などで個人攻撃の被害にあっていることを非難する声明を発表していることを伝えた。