合法化から半年、一変するオクラホマ州の医療大麻産業 寛大な制度も後押し
全米で繰り広げられている医療用または娯楽用大麻プログラムは、一般的に数年単位の極めて長期的な工程を要する。しかし、オクラホマ州は例外的だ。2018年6月に行われた住民投票により医療用大麻が合法化されると、瞬く間に状況が進展した。
合法化に向けての投票では57%が支持するとの結果が示され、全米屈指の保守的な州において、医療用大麻に関する国内でも極めてリベラルな法律が制定された。それから半年以上が過ぎた現在、大麻産業は好景気に沸いている。
農家や起業家たちは競い合って栽培事業に乗り出し、州政府は積極的に新規の患者や生産業者、薬局経営者たちに対してライセンスを交付している。小売販売店は、合法化の4ヶ月後にはオープンしていた。
一方で、ノースダコタ州やオハイオ州、隣接するアーカンソー州では、2016年に医療用大麻が合法化されたものの、法的な争いや干渉が続き、いまだ販売開始に至っていない。
「私たちは本当に自由奔放なのだと思います。多くの側面において西部特有の自由さがあるのだと。ここオクラホマは、かなり無党派層が多いのです。元々は共和党支持者の多い州でしたが、住民たちは政府によって多くのことを規制されることを好みません」と、弁護士のサラ・リー・ゴセット・パリッシュ氏は述べる。同氏はノーマン市に事務所を構え、大麻関連事業を担う数社の代理人を務めている。
実際、他のどの州とも異なり、オクラホマ州当局は医療用大麻の使用にあたって対象とする医学的疾患を規定していない。そのため、大麻購入のための個人向けライセンスの申請が殺到した。
2018年8月以降、2万2,000件以上の申請が承認され、処理中のものは数千件以上ある。現在、認可を受けた販売店は785ヶ所である。6ヶ所ほどの販売店を有する小さな町もあれば、州内の二大学園都市であるノーマン市やスティルウォーター市には、合わせて45ヶ所の販売店がある。
セージ・ファームは、認可を受けた1,200以上の生産業者の1つである。経営者であるベン・ニール氏は、タルサ郡の農村地域にある6ヶ所の温室で、長年にわたりトマトやレタス、ピーマン、その他野菜を栽培し、その手法に先端技術を取り入れてきた。現在、畑の3分の1を大麻栽培に切り替えた。3名の作業者を新たに雇用し、約90キログラムのあらゆる品種の大麻が収穫されたところだ。来月競りに出される予定である。
ニール氏によると、収穫された大麻は一律453グラム当たり2,800ドル(約30万円)で売り出され、合計56万ドル(約6,100万円)になるという。オクラホマ州が急速に大麻産業を受け入れていることにひどく驚いていると話す。
「9ヶ月前、オクラホマ州は、いつものように最後の州になるだろうと話していました。その後、突然このような状況に陥ったのです」とニール氏は述べる。
オクラホマシティ東部に位置するベッドタウン、ショーニーにある販売店オクラホマ・ルーツの売れ行きは好調だ。かつて金属組立工場であったこの場所で、チャンス・ギルバート氏が大麻の栽培、加工、販売を行っている。
「物事がこんなに早く動き出すなんて驚異的なことだ。アーカンソー州にならって、実施されて普及までに数年はかかると推測していた」とギルバート氏は話す。フル操業時には、月間約23キログラムの生産量を見込む。
オクラホマ州における普及を早めた直接的な要因は市民主導の住民投票であり、短い期限の設定と、資格のあるすべての申請者にライセンスを交付するよう規制当局に求めたためだ。そして、いくつかの政治的要因も相まって、取り組みは前進した。
まず、メアリー・ファーリン州知事は、2018年11月の選挙においてではなく、同年6月に直接投票を行うことを提議した。警察や医師、聖職者たちからの反対があったものの、圧倒的な支持で可決した。これにより、昨年2月に開かれた州議会の前に十分な時間をとって、プログラムの内容を練り上げることが出来た。
その後、喫煙による大麻の使用を禁止することや、販売店には薬剤師の常駐を要請するなど、オクラホマ州保健局によって厳格な制約が課されようとした際には、住民たちは憤慨した。大麻合法化を求める運動に関わるあらゆる組織が結集し、さらに、共和党の州司法長官が保健局は度が過ぎた、という法律上の見解をもって仲裁に入った。
「オクラホマの住民でその考えを持つ人はみんな、人々が決めたばかりの政治決定を変えようとする当局にがく然としました。当局との会合の後、司法長官からの文書を経た今、敬遠したい政治的話題といえば議案No.788に関わることでしょう」と、住民投票の議案No.788の作成、推進に携わったチップ・ポール氏は述べる。
保守的なオクラホマ州議会は静観していた。臨床検査や梱包デザイン、また大麻が最終的に闇市場で売り出されることを防ぐための手段について、共和党の有力者たちがさまざまな規準を課そうと模索を続ける一方で、議会は慌てて大がかりな変更を行う考えはない様子だった。
「私は議論に加わるつもりもなければ、人々の意志を打ち砕き、医療用大麻を一掃する試みを行うつもりもない」と、医療用大麻に関する任務部隊の一員であった、エイダ市のグレッグ・マッコートニー共和党州議会上院議員は述べる。
新設された州の機関である「医療用大麻局」は、患者や生産業者、販売店からの登録料により、すでに750万ドル(約8億1,700万円)以上の収益を得ている。また新たに創設された大麻にかかる7%の消費税が、昨年11月より州の財源に流入し始めた。
過半数が反対を主張していた警察関係者でさえ、大麻に関する一般市民の意識変化を受け入れている様子だ。
「夕方、自分の家の裏庭デッキに出てこっそりと大麻を楽しみたい人はとてもたくさんいるのです」と、ワゴナー郡のクリス・エリオット保安官は話す。同氏は保安官になる前の27年間、タルサ郡で警察官を務めていた。
「よく思われがちな、麻薬中毒者だとか怪しげな人たちではありません。仕事をし、税金を払い、教会に通う人たちです。彼らが人目を避けなければならなかったのは、私のような警察を恐れて生活してきたからなのです」
Translated by Mana Ishizuki
By SEAN MURPHY, Associated Press