ドイツ支えた無煙炭鉱、ついに閉鎖 褐炭鉱も段階的に廃止予定
ドイツ最後の無煙炭鉱がついに閉山を迎える。同国の産業革命と第二次世界大戦後の経済復興を支えた産業が幕を下ろすことになる。
12月21日、ドイツ西部のボトロップにあるプロスペル・ハニエル鉱山で、地下1,200mで採掘した象徴的な最後の石炭が、作業員の手によってフランク・ウォルター・シュタインマイヤー大統領に手渡された。この鉱山は、ボトロップから100km北にあるイッベンビューレンの町の鉱山とともに、年内で正式に閉鎖されることが決まっている。
政府広報担当のウルリケ・デマー氏は、「これはドイツにとって、重要な時代の終わりを告げるものだ。黒炭はこの地域の工業化を支え、ドイツ全土に繁栄をもたらした。これは大いに賞賛すべきことです。現在に至るまで、直接的ではないにしろ、誰もがその恩恵を受けてきたわけですから」と語っている。
かつてボトロップ周辺のルール地方一帯は、黒炭採掘一色だった。ピーク時の1950年代には、50万人もの作業員が炭鉱で働いていた。しかし、その後は減少の一途をたどり、手厚い補助金によってなんとかしのいでいた。
1998年以降、ドイツ連邦は同地域に400億ユーロ(約5兆円)を超える資金を提供しており、今後2022年までに、鉱山の維持管理や環境整備の取り組みなどのために支払われる金額は27億ユーロ(約3,375億円)にのぼる見込みだ。この数字には、大学や研究機関、IT関連スタートアップ誘致など、近年のルール地方の経済再開発にかかる費用は含まれていない。
ドイツでは露天掘りの褐炭鉱山も稼働しているが、こちらも近々閉鎖が予定されており、今回の無煙炭鉱山閉鎖はその試金石という側面もある。
この国では電力の40%を石炭エネルギーで生産しているが、科学者らは気候変動を抑制する国際的な取り組みに伴う温室効果ガス排出量を削減するには、石炭使用を止めるしかないと述べている。
しかし、ドイツでは2022年までに原子力発電所を閉鎖する予定であることもあり、他のエネルギー源(とりわけ再生可能エネルギー)では不十分ではないか、という懸念もある。
政府が設置した委員会は2月に報告書を提出し、褐炭鉱山の段階的廃止を提案する予定だ。何万人もの労働者が今も石炭産業に依存した仕事に就いており、今後は党当局者や環境保護団体、鉱山労働者組合代表を含む専門家が、彼らに新たな仕事を探す方法を提案していく。
委員の一人は、ドイツ政府が黒炭産業を支えるために何十億もの補助金を支払ったことについて、今後の教訓だと話している。
ポツダム気候変動研究所の創設者であるハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー氏はAP通信のインタビューに対し、「今回は、徐々に段階を追って実施するというわけにはいかない」と話す。
世界には420ヶ所もの炭鉱地区があるが、いずれも今後数年間、同様に閉鎖の圧力に直面する。シェルンフーバー氏は、ドイツが化石燃料からのエネルギー移行のパイオニアになるかもしれない、と述べている。
12月21日の儀式では、鉱山作業員が地下で命を落とした同僚に敬意を表した。17日には29歳の炭鉱作業員がイッベンビューレンの鉱山にある金属製のドアに挟まれて圧死したことで、その危険性に注目が集まったばかりであった。さらに21日夜、チェコ共和国の炭坑で爆発が起こり、作業員13名が死亡したというニュースも報じられている。
By FRANK JORDANS, Associated Press
Translated by isshi via Conyac